片翼の行方(U)
「ん、、、、風響?」
呼ばれた気がして目が覚めた。だが、隣に風響はいない。
「え、風響!?」
飛び起きてあたりを見回すが、何も残っていなかった。けれど思い当たった。終わらせに行ったのだと。
「間に合って、、どうか」
それしか考えられず、灯りだけを持って塔へと向かった。
夜の森。月と星が手助けのように明かりを投げる。ルネは歩き続けた。
だが道らしい道があるわけではない。そして思い出した。目くらましの結界の存在を。
翼を持つ者。有翼の流れを汲む者しかたどり着けないと。
「そんな、、、風響」
待つしか出来ないのだろうか。一番苦しい時に隣にいたいのに。
「悔しい、、、よ。こんなの、、、」
このまま歩き続けてもたどり着けない。けれど引き返すことも出来ずに立ち尽くすだけ。
そんなルネに届いたのは羽音だった。驚いて見上げた空に影が浮かぶ。近づいたそれは、、
「統括、、、さま?」
「目くらましの結界を歩き回っている気配、お前だったのか。こんな時間に、1人でどうした」
目の前に降り立ったのは”白銀の統括・カルサイト”。有翼の中で唯一の銀色の翼を持つ者だった。
その色は有翼全ての頂点に立つ証。翼の再生、命の操作までもが可能な力ゆえに、絶対的な権力を持つ。
本来なら、有翼以外に関わることなど無い相手だが、ルネが有翼側に関わったことから力を借してくれている。
そのカルサイトが、目くらましの結界の中を歩いている気配に気づいて下りてみたら、ルネだったというわけだ。
「、、、あの、お願いです。私をキュリオたちのいる塔に連れて行ってください。
そこに風響もいるはずなんです」
「、、、、、」
「急がないと風響が。もしこのまま会えなかったら、手遅れになったら、そんなの嫌なんです。
お願いだから、出来ることなら何でもしますから」
泣きながら、それでも必死だった。カルサイトはそっとルネを包んだ。
「連れて行くから、何をしようとしているのか説明してくれ」
「、、、、ごめんなさい。いきなりこんなこと言っても、わかるはずないですよね」
今までのことを話した。風響が昔、片翼を奪い取ったこと。その片翼を宿したまま、キエヌで目覚めた命。
そして、戻そうとしていることを。
「痛みの代替わりだと」
「それがどれほどのものかは、、、私にはわかりません。だけど、最悪の可能性もあるって」
「そのルディから抜いたときと、自分からぬくときと、負荷が二重になるからな。危険は高い」
「風響はどうなるんですか」
「行った方が早いだろう。つかまってろ」
白銀の翼が羽ばたいた。
塔に近づく羽音。だが、相手がたどり着く前にシャルミラが気づいた。
「キュリオ、風響をお願いします」
「シャルミラ?」
「この気配は、おそらく」
シャルミラは部屋を出ると、塔の最上部に向かった。そこに降り立ったのは、思ったとおり白銀の統括。
ルネを連れていることにも、さして驚きはしない。
「シャルミラさま、風響は」
「何をしているのかは、あらかた聞いた。ルネは結界の中を歩き回っていたんだ」
「ルネ、、、、」
「目が覚めたら風響がいなくて、きっとここだと思ったんです。森を歩いてて、統括さまに連れてきてもらいました。
お願いです。風響に会わせてください」
「、、、、、こちらへ」
何を説明するわけでもなく歩き出したシャルミラに、2人が続いた。
塔を下り、一室の前で足が止まった。
「キュリオ、ルネと白銀の統括様です」
一声かけて扉を開ける。そこにはベットに横たわっている風響がいた。キュリオが黙って傍らを空けた。
「風響、、、風響っ!」
ベットに駆け寄り取った手が、熱い。
「、、、、かなりの高熱が出てる。意識も、戻ったり戻らなかったりなんだ」
呼吸も荒く、胸は大きく上下を繰り返していた。
「風響、聞こえてますか?隣にいますよ」
「ん、、、う、、ルネ、、、」
「怪我は?」
「それは、、ない、、。落ち着くのを、、待つしか、、」
「わかりました。無理に喋らないで」
「黙って、、、出てきて、ごめん。だけど、、どうしても、、っ、、」
「わかった。わかったから、、、、、ずっと、一緒です」
会うまでは、どうして黙って出て行ったのか文句の一つも言いたかった。
だが、いざ目の前にすると、ただいてくれたことが嬉しいだけ。
2人を残し、シャルミラたちが静かに部屋を後にした。