片翼の行方


「ふぅ、、、」

運び込んだルディをソファーに下ろす。そのルディを、ルネはしげしげと眺めた。

「内に翼を持っている、、だけど、人なんですよね」

「ああ、キエヌで生きる。それは、これからもだ」

双翼だったキュリオの翼を奪ったのはいつだったろう。遠い昔のような。昨日のような。

そして、奪った片翼を目覚める前の魂に宿した。人として生まれたとき、どうなるかも考えず。

「ルネ、少し離れてろ」

「いるのは、かまいませんよね。手出しはしません。約束します」

決着を付けたいという風響の思いを止めるつもりはない。ただ、1人で抱えて欲しくないだけ。

共に在ると誓った言葉のままに。

「すぐに終わらせるよ」

風響はルディを片手で抱いた。

(私が与えた片翼、目覚めろ。覚えてるだろう)

風が入ってくる。優しくそよぐ風はルディと風響を凪いだ。

それに応えるかのように翻る羽音がした。ルディの背には漆黒の片翼があった。

「こえがキュリオの片翼なんですね」

「ああ、そうだ」

キエヌの塔に住む黒の片翼、キュリオ。そのもう一方が目の前にある。

「それで、どう」

「代わってくれ」

ルディをルネに預けて自分は背中に回る。翼に手をかけ、大きく息をついた。

「しっかり支えてろよ」

「ええ、、、風響!?」

翼に掛けた手を一気に引いた。ルディの体が弓なりに跳ねてルネの腕に戻る。

そして離れたと思った翼は、影が消えるように姿を消した。

「どこ、、に、、」

「私の中に。だから、自分の双翼と、今の片翼を宿している状態だな。ルディは?傷はないはずだ。体のほう」

ルネはルディの診察に入った。予測は出来たけれど、思った通り。

「呼吸、心音、脈ともに落ちてます。このまま搬送しましょう。
 必要最低限の検査をして、手術まで持っていったほうがいいかもしれません」

「その判断は任せるよ。運ぶか」

「あの、、この人を待っている人には」

「、、、、、」

アントワネット。一度だけ入った仕立て屋の女主人を思い出す。無事を願いながら待っているはずだ。

「このまま連れてくわけにはいかないな。アージュに頼もう。並びの店なんだから話はできるだろう」

「そうですね。私たちよりは適任でしょう。お願いします。
 、、、、この人も、有翼の争いに巻き込まれた一人なんですね」

翼の色が違う。それだけの争いはどこまで尾を引くのだろう。争いが終わっても傷は続いている。

そして今、医者としての自分の患者になったのだ。

「絶対に助けます」

強い意志も持った言葉だった。


  BACK   NEXT