

「ヒユラ、話してくれないか」
地下から戻り、ルイスはヒユラと向き合った。
「何故本当の名前を教えなかった?あの男は知っている相手なのか」
「彼は、僕の兄だよ」
「ヒユラ、、、、、」
「昔と全然変わってない。自分がどうなるかわかっても、あんな眼で僕を見るんだから」
紅い滴が落ちる。
「わかってるよ。どうしようもないってことは。だから終わりにしてくれ」
ヒユラがシャウルのことを一日として忘れないことは、ルイスにもわかっている。
最悪の形で再会した現実を受け止めようと
必死に歯を食いしばるヒユラに出来ることはただ傍らにいることだけ。
「恨みたくなる相手が欲しいときは私を恨めばいい」
「ルイスを恨む理由なんかないさ。恨むとしたら、、、あいつかな」
「さっき地下で会った相手のことか」
「出来損ないだって、僕は」
ヒユラは自分の手を見つめた。
ヴァンパイアはある一定の年齢で成長が止まる。
だが、早くてもルイスのように青年といえる年齢であり
助けられた時点から成長の止まっているヒユラは
口汚い噂話の種にされることも多かった。言い返せる言葉もないけれど。
「言われても仕方ないか。この姿で成長が止まっているなんて僕くらいなんだし、、ルイス」
膝を折り、同じ目線でルイスが自分を見ていた。
「例え1人になっても、私はヒユラの隣にいるよ」
「ありがとう、、ルイスには大切な人はいないの?ルイスの親はどんな人だった?」
助けられたときには、一族を束ねる者としてかしづかれていた。
その一方で、ルイスが楽しそうに笑ったところを見たことはない。
「もう、、忘れたな。昔のことだ。そろそろ戻ろう。夜が明ける」
「今日は棺じゃなくベットでいいかな」
「だか、ベットでは休めないだろう」
「大丈夫」
「わかった。お休み」
ルイスを見送り、ベットへともぐりこんだ。
「ごめん、ルイス」
タイムリミットまでは、あと半日。
夕刻。
「、、、、クウヤ、、時間かい」
ヒユラはシャウルの問いに答えず扉に手をかける。
より強固になった封印に弾かれ
触れた指先から痺れが身体を回るが離そうとはしなかった。
「何を、、、離せ!」
「、、、く、、いっつ、、」
他者のかけた封印を解くということは
鍵のかかった扉を無理やり押し開けることと同じ。
体力を精神力に変えて、一点に集中させる。
「開いてくれ、、、、頼む」
硝子の砕けるような音がして封印が解けた。中に入り枷を手に取る。
「クウヤ、何をするつもりだ」
「静かに」
幸い扉の封印ほど固くはない。扉と同じように封印を解いた。
「ふう、、、、、」
一息ついたヒユラを見れば汗だくになっている。
「急いで、すぐに気づかれる」
「私を助けるつもりなのか?そんなことをしたらクウヤまで」
人間には聞こえない、かすかな音がヒユラの耳に届いた。
「いいから、早く」
強引にシャウルの手を引き、ヒユラは夜の森へと向かった。