


「!、、、夢か」
目が覚めたのは日が暮れかかるころ。夢だと安堵したのもつかの間。正夢になるのはもうすぐだと気がつく。
「どうしようもないんだよな」
理屈ではわかっている。避けられないことなのだと。だからこそなのか、ヒユラは牢へと向かった。
「来てくれたのか、、、ありがとう」
一日が経過しただけで随分とやつれて見えた。嫌でも夢と重なってくる。
ヒユラは扉に手を伸ばす。昨日よりも封印は強くなっていた。
「何をしている」
そう声をかけてきたのは同族の1人。
「別に何も」
愛想の欠片もなく返した。
「ふん、、、出来損ないが」
「何、ぐ」
「クウヤ!」
相手はヒユラの喉元を掴むと軽々と持ち上げる。
「、、は、、な、、」
「クウヤだと?」
「、、、に、、、い、、」
ヒユラの意識が抜ける直前
「手を離せ」
ルイスが割って入る。相手は投げるようにヒユラを離し去っていった。
「つ、、ゲホ」
「大丈夫か」
「ああ、、」
ルイスはヒユラとシャウルを交互に見る。
ルイスと視線の合ったシャウルは深い礼を返した。
「ルイス、、、」
ルイスは封印を解いた。
「ありがとう」
ヒユラを中に入れ、再び封印をかけると音もなく戻っていく。
ヒユラはシャウルの傍らへと寄った。
「さっきの、大丈夫かい?」
「たいしたことない」
「、、、、本当に似ている」
シャウルが言う相手が誰なのかわからないはずがない。
当の本人なのだから。
「昔、生き別れになった弟がいるんだ。
君は、別れたときのヒユラに生き写しなんだよ」
「、、、そんな顔で見るな。僕はあなたを殺さなきゃならないのに」
「君が私を?」
これには、驚いた様子でヒユラを見る。
「生きるために、僕たちが生きるためには必要なことだから」
「それは、、、脅されているのか?私と引き換えに誰かを」
「話すよ。信じてもらえるかはわからないけど」
こんな再会でなければ、腕の中に飛び込んでいきたかった。
戻れなくても、人でいるいうちに出会えていたならば、、、。
「僕たちは人じゃない。夜の闇に生きるヴァンパイア。
普段は必要最低限の狩りしかしないけど
一年に一度だけ生贄が必要なんだ。それがあなた」
「、、、、、」
「あなたが選ばれたのに理由はないと思うよ。
生贄を探していた同族が、たまたまあなたを選んだだけ。勝手だとは思うけど」
「君みたいな子供でも?」
「、、、そうだよ」
「な、クウヤ?!、、う、、」
喉元に打ち込まれる小さな牙。すぐに離されたが感覚は確かだった。
「これくらいじゃ何も変わりはしないけど、ヴァンパイアだってことは信じるだろう」
信じるしかない。そしてヒユラの悲しそうな顔の訳もわかった気がした。
「、、、そうか。君が悲しそうに見えたのはそういうわけか」
望んでやっていることではない。それが、せめてもの救いのように思えた。
「ありがとう、話してくれて」
「恨んでもいいよ」
「不思議だけど、そんな気持ちにはならないんだ。
何も知らないよりはましな気がしてる」
シャウルの言葉に嘘がないことはわかった。昔と変わらない眼差しでヒユラを見る。
「私はいつまで」
「あと、一日」
「一つだけ頼みがある。夢を見させてくれないかな」
「夢?」
「君をヒユラとして」
「僕は」
「わかってる。だけど、、最初で最後の我侭だから」
「兄さん、、、、」
思わずでた呼びかけ。シャウルはぎこちなく動く腕でヒユラを抱き寄せた。
「ありがとう、、ヒユラ」