数日分の薬を作り終えた夜、部屋に戻ったベルクをツギリが待っていた。

「遅くにすみません。少しいいですか」

「構わないが」

ベルクはボトルを空けた。

「飲むか」

「いえ、私は」

ツギリの前でボトルのままというわけにもいかず、グラスを琥珀色に満たす。

「それで、話は」

「2人で出ていた間に、あなたを訪ねてきた人がいました。オルフォと名乗っていましたが」

その名前にベルクが止まる。

「ご存知ですか」

「知ってはいる相手だ。何か言ってたか」

「不在と申し上げたら、そのまま戻られました」

「、、、、、」

「それともうひとつ。こちらはヘレナから聞いた話ですが、ご自身の館に戻られると」

「ああ」

「ヘレナが一緒に行きたいと、そう言ってきました」

「それは断った」

「けれど、ヘレナを嫌いとは言わなかった」

「、、、、、」

「叶うなら、叶えてやりたいと思います。
 とはいえ、何一つ素性がわからないままというわけにもいきません。
 あなたの父上が無理なら、血縁にあたる方と引き合わせを願いたいのですが」

ツギリの立場から当然の要求なのだろう。

それはわかるが、ベルクは素性を明かしたくはなかった。

「明日には戻る。二度と会うつもりはない。これなら知る必要もないだろう」

「では、ヘレナの申し出を断ったのは何故です」

いつになくツギリが食い下がる。

「ヘレナを傷つけたのは謝る。だからここまでにしてくれないか」

「、、、あなたが人ではないからですか」

「何を、、、」

ツギリは真っ直ぐベルクを見ていた。

「曽祖父が残した文献に気になるものがありました。初めてお会いしたときは気がつきませんでしたが、、。
 それによると、曽祖父がこの屋敷の主だった頃森には魔物が住むという噂があったそうです。
 そして曽祖父と町の男たちは山狩りを決行した。結果、銀色の髪をした子供だけを逃がしたと」

「、、、、、」

「その子供というのがあなたなのか、それを確かめたいのです。
 あなたがその子供ならば
 あのオルフォというのはあなたを追っているハンター、違いますか」

「、、、じゃあ、あのとき私たちを襲ったのは」

「、、、間違いなさそうですね」

知らずに助けたのは、この腕に収めたのは敵の子孫。

忘れたくとも忘れられない光景がまざまざと蘇る。

「私をどうする。正体をあかして町の人間の前に突き出すか」

「いいえ、何も。確かめたかっただけです。
 あなたが復讐のために近づいたのなら考えますが
 ただの偶然ならば、何をどうする気もありません」

そう言いながらベルクを見るツギリの表情は、目覚めた朝と変わらない。

「、、、馬鹿なやつ」

「遅くにすみませんでした。ヘレナに黙って出て行くことはしないでくださいね」

ツギリが席を立とうとしたとき、扉を叩く音がした。

「ヘレナ?こんな時間に」

ツギリが扉を開けた。いたのはヘレネと、ハンターであるオルフォ。

「あなたは、、」

「ベルクさんのお客様みたいなんだけど、、」

「入れてくれ」

抑えの効いたベルクの声が告げた。

部屋に入ったオルフォがベルクと向き合った瞬間、ピンと空気が張った。

見えないけれど重苦しいほどの緊張感に圧倒され、ツギリとヘレナは言葉なく佇んでいた。


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