夢使い


「ここは、、、キエヌか」

光に包まれてサイファが出た先は
街を見下ろせる丘だった。

「さて、何処にいる」

ここは夢の中。リシュナの姿を追う。

「街中、、、あれが引き込んだ相手か」

広場にいるリシュナが見えた。

そのリシュナに男が近づいてきた。

待ち合わせなのか。リシュナは微笑んでいる。

「所詮は夢の中だ。連れ戻すぞ」

サイファは街中に出た。


「今日はゆっくりできるのかい?」

「長くは宮を空けれないわ。アズライル様を」

「そこまで」

男はリシュナの唇に触れた。

「せっかく、こっちに2人で来たんだ。
 向こうの話しはやめておこう」

「、、、、そうね、たまには」

「リシュナ」

割って入ったサイファに2人は振り向いた。

「アズライルの命で迎えに来た。戻れ」

「アズライル様の?何かあったのかしら。
 ごめんなさい。今日は戻るわ。また今度」

「待った」

男は止める。無論、予測の範囲内。

「アズライル様に伝えて下さい。もう少しだけと。
 ちゃんと、送り届けますから」

「共に帰れとの命令だ。出来ないな」

「アズライル様からの使いだと、証明できますか?」

「何を言うの。そんな嘘を伝える理由なんて」

「そうだ。嘘じゃない。
 お前こそ、リシュナを騙しているだろう」

「え、、、、」

「何が根拠だ」

「ここはリシュナの夢の中だ。思い出せ。
 緑の深い森で、知る人の声を聞いた。
 そのまま気を失って、今は宮で眠っているんだ」

「夢?声を聞いて?私は、、、、、」

戸惑いが生じた。

この戸惑いが、檻を破る割れ目になる。

「行こうリシュナ。聞かなくていい」

「でも、、、、」

「精霊王はお前を助けたいだけだ。
 私に対し、膝を折って頭を下げた。
 その想いが信じられないか?」

「待って、、、、待って!」

「手を取ってくれ、リシュナ」

「私の手は、お前を助けたいと望む精霊王の手だ。
 傍から離れず目覚めを待っている。信じる相手の手を取れ」

差し出された2つの手。小さく割れた音がした。

「そうだわ、、、、私」

リシュナはサイファの手を取った。

「リシュナ、、、、」

「これは夢。だって、あなたは」

「余計な事を、、、もう少しだったのに!」

ぐらりと空間が揺れた。

サイファは結界を張り、リシュナを中に入れる。

「ここから動くなよ」

「あなたは」

「一体誰だ。夢の中で意に反するなど」

「悪いな。夢は私の専門分野だ」

「何、、、、」

「名乗るのが遅れたか。夢使いのサイファ」

「夢使いだと」

「夢の檻、抜けさせてもらうぞ」

「行かせるか!」

風が狂い、街並みが消えていく。

「リシュナ、あれを見ろ」

「、、、、あれは」

示された方向で闇が渦巻いている。

だがその先に光があった。

「あそこから抜けられる。そうすれば夢から目覚める」

「でも、あなたは」

「追いかける。こいつを抑えてからな」

「一緒に出ましょう」

「いいから行け。精霊王が待ってる」

抑えを緩めて共に行けば、道を塞がれるかもしれない。

ぎりぎりの線だ。

「追いかけてくれるのね」

「ああ」

「約束よ」

「約束する」

ゆっくりとリシュナは立った。

「他のことは考えなくていい。光だけを見ろ」

「わかったわ」

翼を翻し、飛び立った。











「逃すものか」

「お前の相手は私だ」

サイファは必死で食い止める。

そしてリシュナが抜けた。

「お前だけでも糧にしてくれる」

闇色が全てを覆い、街は消えた。

リシュナは夢の檻を抜け、目覚めただろう。

「ほう、これがお前の意識下か。
 何もない、ただの闇色とはな」

「私の夢に入ったとでもいうつもりか」

「意識下。お前に一番近いお前自身。
 哀れなことだ。光1つ通さないとは」

「眠りを選んだあの時なら、そうかもしれないな」

「今は違うとでも?強がりを」

セルジュの言葉が、サイファの中にあった。

無事に戻って来いと。

「私自身が光を閉ざしたのなら、再び道を作るまでだ」

「お前、、、、させるか!」

「現と夢を繋ぐ扉、姿を見せろ」

サイファの手の中に小さな光が生まれた。


「んっ、、、、」

「リシュナ?」

「リシュナ殿」

「しっかりいたせ。リシュナ」

「あ、、、アズライル様、、、私」

リシュナの瞳が開いた。

「リシュナ、わかるか」

「今のは夢、、、、いえ、違うわ。サイファ」

小さな体が隣で横たわっていた。

「しっかりして」

「リシュナ殿、サイファのことがわかりますか」

「道を示してくれました。夢だと気づかせてくれた。
 アズライル様が待っていると」

「リシュナ」

「追いかけると約束してくれたんです。
 私の後を追って、夢の檻を抜けるって」

「まさか、、、、サイファ」

「戻っておいで。待っていると言ったはずだ」

「お願い。戻ってきて」

届くことを願い、信じて名前を呼んだ。


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