夢使い


「ここか」

「話しだけでも聞いてもらえると
 いいのですけれどね」

セルジュとアズライルは、精霊が見つけ出した
サイファの家の前にいた。

「行ってみましょう」

踏み出した時

「セルジュか?」

背中で声がした。振り向けばサイファがいた。

「また会えたね」

「そなたがサイファか。精霊王アズライルじゃ」

「精霊王?」

「そなたを捜しておったのは我での。
 セルジュには同席を頼んだ」

「そうですか。とりあえず、どうぞ」

「サイファ?」

先日の拒絶とは正反対とも思える雰囲気に
セルジュは思わず反芻していた。

サイファは淡々と返す。

「どうした。話くらいなら聞くと言っているんだ」

「真か?」

「ここまで来たのなら、ただで戻るつもりもないのでしょう。
 根競べをするつもりもありません」

「そうか、ありがとう」

「心から礼を言うぞ」

「まだその言葉は早いと思いますけどね」

サイファは2人を招き入れた。


部屋に入り、ソファーに乗る。

セルジュとアズライルも腰を落ち着けた。

「何が望みですか」

「宮に仕えておるリシュナが、何者かに囚われた。
 助け出してほしい」

精神体を何者かが連れ去ったこと。

眠ったままのリシュナと文献から見つけた
夢使いの存在までを説明した。

「リシュナが囚われたのは夢の中ではないかと
 考えておる。
 夢使いであるそなたなら、リシュナの夢を
 辿ることが可能ではないかと、思うてな」

「どうだろう。やってもらえないかい」

「夢の檻、、、、か」

確かに可能性は高い。

そして自分なら、夢に入ることができる。

しかし、その先はリシュナしだい。

「目覚めを望まなかったらどうします」

「、、、、、リシュナに戻る気が無いと?」

「夢の檻は、大抵本人にとって都合よく出来てます。
 居心地がいいから、夢を夢と認識できず目が覚めない。
 認識できたとしても、戻る気が失せている場合も
 少なくありません。それからもう1つ。
 戻るつもりがあったとしても、夢の檻に引き込んだ相手が
 悪意を持ったならば、戻れないこともあります」

「状況も結果も、やってみなければわからない。
 そういうことか」

アズライルは無言だった。

「それだけ、繊細で扱い難いものなんですよ」

「それでも今は、そなただけが希望じゃ」

アズライルはソファーを下りて膝をついた。

「危険が伴うことは承知の上で頼む。
 リシュナを助けてくれ。この通りじゃ」

アズライルの願いはリシュナが戻ること。

戻れない可能性と同時に戻る可能性があるのなら
それに賭けたい。

「そなたには、すまぬ」

「精霊王、、、、」

「、、、、わかりました。戻ってください」

「手を貸してくれるんだね」

「ただし、今言ったとおり結果は予測不可能です」

「どのような結果でも誰も責めぬ。約束じゃ」

(、、、、何度も聞いた)

求めに応じたそのつど、繰り返した言葉だ。

多くの場合、そのお約束は翻った。

最悪はリシュナだけを帰し、廃業でもいいか。

ふと、そんな思いが過る。

「先に戻っていてください。後から行きます」

「案内は」

「それこそ、風の精霊にでも頼みますよ。
 この場所だって精霊が捜したのでしょう」

「私も、いてかまわないかな。何ができるでは無いけれど」

「好きにしろ」

「ありがとう」

「セルジュ、そなたにも世話になるが」

「お気になさらず。やはり精霊王の宮には
 リシュナ殿のお声があってほしいと思います。
 では、私たちは先に戻りましょう」

「また後ほどな。よろしく頼む」

「はい」

「承りました」




 





2人が宮へ戻って暫く後、サイファも宮に到着した。

「お待たせしました」

「サイファ、もしもの時はそなただけ戻れ」

「精霊王、、、、」

「、、、、、」

「リシュナもきっと、同じことを言うはずじゃ。
 どちらかを選ばねばならない。
 その可能性もあるのだろう」

「、、、、ええ」

「ならば、そうしてくれ」

「確かにその可能性はあるでしょう。
 しかし、初めからそれを念頭に置くことはないと思います」

「セルジュ」 

セルジュは膝を折ると、サイファを抱きしめた。

「2人で無事に戻っておいで。
 強い願いはきっと力になってくれる。待ってるよ」

「出来ることをするまでだ。言葉は覚えておこう」

サイファは自分から、セルジュの腕を出た。

ベットでリシュナと並び手を重ねる。

(夢へ続く道。その扉を開け)

2人が見守る中、サイファはゆっくり目を閉じた。


   BACK   NEXT