宵闇草子


「兄さん、、、、」

「いるよ」

店を閉め、白竜は蛍雪につきっきりだった。

薬が手に入るまでは時間がかかる。

解熱剤と湿疹をおさえる塗り薬で処置をしてはいるが
所詮その場しのぎの気休めでしかない。

他に出来ることといえば
ベッドに柔らかい敷物を入れるくらいだ。

それでも時々蛍雪は眉を寄せた。

「、、、、水、、、、」

「起こすぞ」

静かに起こして口元に運ぶ。

飲み下した蛍雪は、ほぅと息をついた。

「薬が見つかったとして、僕に効くのかな」

「お前は人の血を濃く受け継いでいるはずだ。
 懸けるしかない。もしもの時は、一人にはしないから」

「兄さん、、、、」

「横になっていろ」

そっと戻した。そこに呼び鈴が鳴った。

「誰か来たね」

「すぐに戻るよ」

「うん、、、、」

白竜は外に出た。


いたのはセナとロバート。

「こんにちは」

「先日はどうも」

前置き無しにセナは切り出した。

「弟さん、リアス熱だってね」

「どうしてそれを」

白竜は驚きを隠せない。そして隣のロバートに目を向ける。

「こちらは」

「ロバート。僕の知り合い。薬、手に入るよ」

「、、、、、」

言葉が出なかった。

「中に入ってもいい?詳しいことはロバートから聞いて」

「は、、、はい」

わけのわからぬまま、白竜は店のほうに2人を案内した。


店に入ると、セナは離れた位置に座った。

自分の役目はここまで。

そして、ロバートのやり方に口出しをしないよう。

ロバートは話を切り出した。

「私の掛かりつけの医者から
 リアス熱の患者が出たと聞いてね。
 その前にセナからあなたたちの話は聞いていた。
 リアス熱の薬は市場には出ていない。
 だが、私の会社で在庫を持っている」

「本当ですか。あの、譲っていただけませんか。
 勿論、代金は支払います」

天の助けとばかりに、白竜は身を乗り出した。

何もせずに終わりを待つよりは
結果、悪影響がでたとしてもやれることをやりたい。

そんな白竜に、ロバートは一枚の紙を差し出した。

「買取ならこの額で」

「、、、、、」

「備蓄は僅かなうえに、市場に出回る前の品だ。
 安いものでないことは理解してもらいたい」

「それは、、、、わかります」

ロバートの言いたいことは理解できる。

だが、全財産を薬につぎ込むわけにもいかない。

一回で出て行く額としては大きすぎた。

「あの、分割でお願いできませんか。
 必ず全額お支払いします。どうか、この通りです」

白竜は椅子を降りて頭を下げた。

が、ロバートは淡々と続ける。

ロバートにとって、これは商談の一つにすぎないのだから。

「それはこれから詰める話だ。戻ってくれ」

「、、、、、はい」

「一月、いくらまでなら払える?」

「少し待ってください。すぐに」

白竜は席を外し、帳簿を抱えて戻ってきた。

実質の生活費を差し引いて、限度額をはじき出す。

「これくらいで、どうにか」

「、、、、時間がかかりすぎるな。これでは無理か?」

ロバートは端数を切り上げた。

「、、、、待ってください」

白竜は再度はじきなおす。

ぎりぎりではあるが、払えない額ではなさそうだ。

「わかりました。これで」

「ではもう一つ。
 この支払いが出来なくなったら、店をもらおうか」

「そんな、、、ここを担保にしろと」

ロバートは容赦なかった。

「こちらからの条件は以上だ。考えたいなら2日待つ。
 決まったらここに知らせてくれ」

「、、、、、」

ロバートは席を立った。

「戻るぞ。セナ」

「僕もこれ以上は言わないよ。あとは、あなたたちで決めて」

「2日、、、、ですね」

「ああ」

沈む白竜を気にかける様子も無く
ロバートとセナは店を後にした。

「蛍雪、、、、」

一人、白竜は天を仰ぐ。

「、、、、、お前を一人にはしない」

出来ることをしたうえで助からないというのなら、それが天命。

白竜は蛍雪の部屋に戻った。





「誰だったの」

「セナさんだよ。今日は帰ってもらった」

「兄さん、、、、お店」

「店がどうかしたか」

「ずっと、閉めてるでしょう」

「心配するな。お前のほうが大切に決まってるだろう」

「、、、、、ありがとう」

ただ2人。時が静かに包んでいった。


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