

宵闇草子
次の日。白竜はロバートを訪ねた。
「昨日の条件でかまいません。薬を譲ってください」
「わかった」
ロバートは正式な契約書を前に置く。
「確認を」
毎月の支払額。
滞った時には店の権利を渡すこと。
そしてロバートの署名。
一つ一つを慎重に確かめていく。
「これで結構です」
「交渉成立だな」
「薬はいつ渡してもらえますか」
ロバートは時計を見た。
「明日の昼くらいになる。家でいいのか?」
「はい」
すんなりと返った答えに、ロバートは疑問を感じる。
「入院させたほうが利口だと思うがな」
「薬を待つことしか出来ないのなら
傍にいてやりたいので」
「だが、このままでは店も開けられまい。
これからは金が必要になるだろう」
「容態が落ち着いたら、店を開けます。支払いは必ず」
「まあ、、、そちらの内情まで関わるつもりはない」
「ではこれで。よろしくお願いします」
するべきことを終わらせ、短時間で白竜は部屋を出た。
「2人きりか」
目の不自由な弟を守り、誰にも頼らずに。
あの男はこれからもそんな生き方を続けるのだろう。
守りたいもの、今の自分にあるのだろうか。
「、、、、全ては虚ろな虚構。この町も」
止まることの無い時に背中を押され、人が流れていく。
そんな町を、ロバートはタバコを燻らしながら眺めた。
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蛍雪の容態は悪化していた。 食事が喉を通らなくなったため栄養剤でしのいでいるが 「もう少しだ。明日には薬が手に入るから」 「薬、、、、」 「ああ。医者が見つけてくれたよ」 「でも、、、高いでしょう。お金、、、」 「分割にしてもらった。心配しなくていい」 「、、、、兄さんは、、、大丈夫なの」 「何がだ」 「乾いてない」 「、、、、、」 「保存してあった分、、、、終わる頃じゃ」 蛍雪に投薬を初めてから、牙を立てるのを止めていた。 念のためにと保存してある分も残りわずか。 蛍雪の回復と備蓄が底を突くのと だが、かといって今の蛍雪に牙を立てるなど考えたくもない。 「今のお前に、私が牙を立てると思うのか」 「嫌、、、だよ」 「蛍雪、、、、、」 「僕が回復したら兄さんがいなくなってたなんて」 「蛍雪、、、、」 衣が擦れるだけでも痛むはずなのに蛍雪は起き上がり、手は白竜を捜す。 白竜はその手をそっと包んだ。 「一人にはしない」 「兄、、、さん、、、、」 「信じろ」 「兄さんだけだよ、、、、」 「私だって同じだ」 互いが存在するために必要な半身。同じ鼓動が鳴った。 |
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