宵闇草子


「消せない罪、、、、、運命、、、、」

蛍雪の言葉がセナの中で巡る。

読みかけの本を閉じ
気がつけばあの2人のことを考えていた。

どちらかが消えれば、残されたほうも闇に帰る。

それは、後を追うということだろう。

自分はどうなのか。

ロバートがいなくなったら。

自分に飽きて別の鳥を手にしたら。

「誰の鳥になろうが、、、、」

相手が誰であれ、変わらない。

これが生きる術なのだから。

なのに、いつにもまして虚ろな空気がこの身を包む。

何も考えられず、霧の中で立ち尽くすように。

「ロバート、、、、、」

あの2人に会ってから3日。

ロバートは姿をみせない。

自由なお金は渡されているからその意味での不便はないが
物だけで人の心が満たされはしないのだ。

「あっためてよ、、、、、」

ソファーで己を抱きしめて、セナは瞳を閉じた。


「風邪をひくぞ」

「え、、、、」

ふわりと乗った何かに、セナは身を起こす。

「ロバート、、、、」

何も言わずにセナはロバートに抱きついた。

「随分素直だな」

「待ってた、、、、、」

「、、、、、」

「一人の部屋は寒いよ。あっためて」

「一息入れさせてくれ」

ソファーに座ったロバートは、天井を仰ぎ大きく息をついた。

だが、すぐにうつむくと目を閉じる。

セナの前ではめったに見せない姿だが
それだけ忙しいのだろうか。

「疲れてるみたいだね」

「ま、ようやくひと段落だな。終わってはいないが」

「ここに来る暇なんか無いくらい?」

かまってほしいとせがむ子供のような言い方だ。

セナにしては珍しい。

「僕はあなたの鳥。そうだよね」

「ああ。お前の翼は私のもの。
 それを聞きたいのなら何度でも繰り返そう」

ロバートは口移しで酒を飲ませ、そのまま腕を回す。

セナが求めているのはこの腕の中。

「抱いて、、、、ロバート」

包むは、紅の月。


「眠ったか」

ベッドで静かに眠るセナの髪をすき、ソファーに戻った。

今夜のセナは甘えているといったほうが近いだろう。

ロバートに添うセナは、甘えてくる子猫のよう。

そのセナを優しい愛撫で包み抱いた。

ロバートは己の手を見る。

この手にあるセナの翼を。

どんな言い方をしようと、所詮は男娼だ。

今のところは手放す気はないが
以外の関係を望もうとも思わない。

「先の見えない世の中だ。
 手の届く刹那が極上であればいい、、、、」

グラスに純白の羽を落とす。

揺らぎ、グラスの底に沈んだそれは美しい琥珀色に染まった。


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