小さな宝物
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「すみません、お騒がせして」 「いえ」 宿の支配人であるアリエルは、素早く周囲を見る。 従業員から受けた連絡では 「当方から、他機関への連絡は必要でしょうか」 アリエルの言葉は 「いえ、そこまでのことはありません」 「では提携医を」 「かすっただけですから 「わかりました。何かありましたら申しつけください」 「はい」 「ひとまず、これで失礼いたします」 アリエルが戻るのを確認し、ヴェリルは先に言った。 「部屋に行こう。ここじゃ悪い」 「説明してくれるんだろうな」 「ああ」 歩き出したヴェリルが軽く腕をかばっているのに気が付く。 訊きたいことは山ほどあるが、さすがにロビーでは |
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部屋に入ったヴェリルは 「腕、痛めたのか?」 「今じゃない。前の時のが少し残ってるんだ」 「まったく、、、、一体何やったんだよ」 「あの子、持っていたクラスの生徒でね。 場所は森林公園。 気は配っていたつもりだった。 しかし、子供の一人が小動物を追いかけ 子供では難しい足場で動けなくなっていたところを 子供をかばい、自身は傷を作りながら 子供、母親、学校の関係者。 皆感謝する中で 子供の父親だ。 「私の注意が足りなかったのだと 「だから辞めた」 「それで済むなら一番早いだろう。 「向こうはまだおさまって無い。そういうことか」 引率役だったのだから、責任はあるだろう。 しかし、子供が無事に戻ったのなら 出来る範囲で責任をとろうとしたのだから。 またそういう事情なら 「初めから言えよ。 「言い訳になるような気がしてね」 「、、、、、」 「目が届かなかったのは事実。 (これも兄貴の性格だけどな) よくも悪くも、ヴェリルの性格を思えば納得はする。 とりあえずは訊きたかった事もわかったし 「辞めた理由がわかったのはいいとして 「感覚として残っているだけだ。 「あまり驚かせないでくれ。 「悪かった。 「先に用件だけ伝えとく。 「ほんとか?」 「訊きたいことは今のでわかったし、断る理由もない。 「ああ、もちろん。 「わざとなんて思ってない。 「おかしいな」 ヴェリルは不思議そうに首をかしげた。 ヴェリルが家に戻れば手を焼くこともあるだろう。 だが、ヴェリルが戻ることで今の暮らしが そんな自分に気が付き 「チェックアウト明後日だろう。 「昼前くらいだと思う。 「力仕事は?」 「問題ない」 「わかった。じゃあ明後日な。 「もう帰るのか」 「他に寄りたい所があるんだ。 「ソプレーゼ」 ヴェリルに笑顔が向く。 「旨い酒仕入れとくよ。それじゃ」 「ありがとう」 背中から聞こえた声に片手を上げて返し、宿を後にした。 |
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こうして2人での暮らしが始まった。
「よろしくな」
「ああ」
他の従業員に兄と知らせはしたが、もちろん差はつけない。
店を手伝い始めたヴェリルも、表には出ず裏方に徹した。
そんなある日。
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「兄貴、店今日定休日だから」 「酒場で定休日なんてあるのか?」 「月1回は完全に閉めてる。でないと休んだ気にならないよ」 言いながら、最後の一口を運ぶ。 「兄貴にしても、久しぶりの休みだろう。ゆっくりしてくれ」 「そうか。じゃあ甘えさえてもらうかな」 「兄貴が泊ってたあの部屋。高そうなとこだったな。 「退職金それなりに出してもらえたから 「私には縁がなさそうなとこだ」 「まだ使いきってないよ。旅行でも行くか?」 「兄貴と?」 「嫌か?」 嫌とはいわないが、どうにも微妙な感覚を覚え 「そんなに考えるなよ。傷つくぞ」 「いじけても可愛くないからな」 「あ、刺さった」 「、、、、薬代わりにボトル一本キープしとく」 「そいつは何よりの薬だ」 (どこまで本気なんだか。けど、これが家族なのかな) 「どうした?」 「別に。新しいのいれるけど、兄貴は」 「ついでに頼む」 気持ちよく晴れた日の朝。ゆったりと時間が流れた。 |
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