鍵の守護者


戻ったセルジュは、早速伝えられた本を広げた。

鍵の守護者とは何たるかを記した一節から始まり
翼を持たない人々が住む世界へ繋がる門の意味。

遥かな昔、鍵に託された願い等が綴られている。

「ん、、、、これか?」

読み進めていくと、鍵の強化という項目にあたった。

「鍵は修復を試みる門の状態に応じて強化が可能。
 修復が難しい時は、手だてとして有効だろう。
 それで、肝心の方法はどうなんだ」

先の項をめくる。

「精霊の力を集めた水晶と鍵を、精霊王の元へ。
 望みはその先で叶う。
 水晶?だからといって何でもいいわけじゃ、、、」

セルジュは没頭した。


結果を持って、セルジュは宮を訪れた。

「セルジュ殿」

「精霊王はいらっしゃいますか」

「はい、奥に。伺いました。修復は失敗だったと。
 この世界が無くなるなんて、そんなこと」

「何とかなりそうです」

セルジュの言葉にリシュナは顔を上げた。

「本当ですか」

「試してみる価値はあるでしょう。
 とにかく、やれることは全てやるしかありません」

「そうですね。私も聞いていいかしら。
 あまり多くに聞かせないほうがいいのなら
 外しますけれど」

「動くのは私ですが、同席はかまいませんよ」

「ありがとうございます。どうぞ」

先に立ちアズライルの部屋に向った。


「アズライル様、セルジュ殿がみえました」

「セルジュ、手だてが見つかったのか」

姿が目に入ると
アズライルは駆け寄らんばかりの勢いで立った。

「はい。修復可能の確約はできませんが
 有効だとは思います」

「セルジュ殿、お座りください。アズライル様も。
 急いては事を仕損じるといいますわ」 

「と、そうじゃな」

「では失礼を」

落ち着き、セルジュは先の本を置いた。

「この文献によると、鍵は門の状態に応じて強化が可能。
 修復が難しい場合には有効であると。方法ですが」

セルジュは話を進めた。

「精霊の力を集めた水晶と鍵を、精霊王の元へ。
 望むものはその先にある」

「我の元じゃと」

「何か、お心当たりはありませんか」

「ふむ、、、、」

鍵の守護者そのものを、今回初めて知ったのだ。

自分に鍵の強化しろといわれても分からない。

アズライルは思い巡らす。

「水晶と我が揃った先、、、開かずの部屋でも、ん?」

「、、、、あ、アズライル様、もしかして」

アズライルとリシュナは顔を見合わせた。

「うむ。あの場所かもしれんな。
 関わりがあるかどうかは、わからぬが
 宮に開かずの扉があるのじゃ」

「水晶と鍵とアズライル様が揃えば、もしかして」

「可能性はあるの」

「御心当たりがありそうですね」

「取っ手もなくて、扉というよりはめ込んである
 板のような造りなんです。
 動かしようがないからそのままなのですけれど」

「水晶はどこにあるのじゃ」

「道が通じた時に、こちらから水晶を持ち込んで
 門の傍に置いたとの記録がありました。
 必要なのはその水晶のようです。
 こちらから流れ込む基礎効力が過ぎた場合
 過剰分を取り込む役目があると書かれています」

「水晶の力とは、取り込まれた過剰分なのかの」

「ともあれ試せることは試してみましょう」

セルジュは席を立った。

「水晶が手に入ったら、また伺います」

「一人で向かうつもりなのか?」

「水晶を取りに行くだけですから。
 ルトヴァーユ様に同様の報告をしてから向かいます」

「そうか、、、、」

いささかの不安はあるが
断られているものを、無理に押し通すこともできまい。

「手が足りぬ時は言霊を飛ばすのだぞ。
 すぐに向かうからの」

「お気をつけて」

「ありがとうございます。また後ほど」

見送られ、セルジュは宮を後にした。

 


ルトヴァーユにも同様の報告をした後門に向かっていると、呼ぶ声が聞こえた。

「ヴィクトリア」

「どうだったの」

「道半ばかな」

「、、、、どういう意味?」

「下りようか」

曖昧な言い方に首をかしげながらも、セルジュに続き浮島に下りた。


「現状を言うと、今のままでは修復不可だ」

「え、、、、」

修復が失敗したこと、鍵の強化が必要なことを話した。

「これから水晶を取りに向かうつもりだよ」

「そんなに深刻なの」

「でも希望はある。
 それにどんなに困難でも
 諦めることはできないからね。それじゃ」

「あ、セルジュ」

「ん?」

「あたしも、行っていい?」

「ヴィクトリア」

「何ができるわけじゃないけど、でも」

「駄目だ」

セルジュはすぐに返した。

「何が起きるかわからない。
 それに、鍵の守護者が私である以上
 これは私の仕事だよ」

「そうかもしれないけど、役目だからって
 全部一人で抱え込む必要はないでしょう」

「私だけが動いているわけじゃない。
 統括様や精霊王だって動いてくださっている。
 何よりも、ヴィクトリアが引き合わせてくれたから
 解決に向かっているんじゃないか」

「だけど、、、、、、」

納得できていない様子のヴィクトリアに
セルジュは微笑んだ。

「ありがとう、ヴィクトリア。
 気持ちだけでも十分助けになるよ」

「セルジュ、、、、」

「きっと戻るから」

子供をあやすような口づけを額におとし
セルジュは飛び立った。



 



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