鍵の守護者


「出てこんのう、、、、」

「ありませんね」

宮でもアズライルとリシュナの作業は続いていた。

だがこちらも、目ぼしいことはでてこなかった。

「ルトヴァーユ様の方からは何もありませんの?」

「今のところはな。
 何かしらわかれば知らせが来るはずじゃ。
 向こうも新たなことは出てこんのだろう」

「このまま、、、、いえ、何でもありません」

「構わぬ。我とて同じじゃ」

「アズライル様、、、、」

精霊王という立場であるからこそ
アズライルは己に対して苛立ちを覚え始めていた。

結果が出ないことが加速をかけてしまう。

「精霊王の肩書など何の役にも立たん。
 不甲斐ないことよ」

「どんな結果になろうと、最後の一人になったとしても
 私はアズライル様の味方です。お一人にはしませんわ」

「リシュナ、、、、」

多くの言葉よりも傍らにいること。

それが今のアズライルにとって心強かった。

アズライルはリシュナを腕に抱く。

「そなただけじゃ。他に何も望まぬ」

リシュナは静かに任せた。と、そこに

「リシュナ殿。アズライル様」

精霊が飛び込んできた。アズライルは腕を解く。

「何事じゃ」

「ルトヴァーユ様が御出でです」

「、、、、希望と取っていいのかしら」

「そう願おう」

「私が出ます。先に客間へ入っていてください」

「うむ」

希望であることを願い、書庫を出た。

 


「お待たせいたしました」

「ご無沙汰しております。精霊王はいらしゃいますか」

「はい」

リシュナの視線は自然とセルジュに向いた。

「宮に仕えておりますリシュナと申します」

「セルジュです」

「リシュナ殿も、現状は精霊王からお聞きでしょう」

「ええ。ではこちらが」

「鍵の守護者、セルジュ。見つかりました」

「本当ですか、、、、よかった」

今の今だ。リシュナは胸をなで下ろす。

「どうぞ。アズライル様もお待ちです」

逸る気持ちをおさえ、客間へと案内した。


客間に入り、セルジュに辿り着いた経緯を説明した。

「そうか。そなたの友人の友人とはの」

「ええ。ヴィクトリアにも感謝しています」

「不具合の修復に関しては
 門を見てみないと何とも言えませんが」

「そなたに辿り着いただけでも大きな前進じゃ」

セルジュの言う通りではあるが
解決に近づいたことも確かだろう。

これで一つ荷が下りた。

「宝冠とはペンダントのことだったのですね。
 では、永遠の名というのは」

「鍵の守護者は
 受け継いだ時からセルジュと名乗っています。
 ですからセルジュが永遠の名と言えるでしょう。
 私の前も、これからの守護者も名はセルジュです」

「そうでしたか。本当に人の縁というのは不思議ですね。
 このような形でお目にかかるだなんて」

「真の力とは他者との絆なのかもしれん。
 ともあれこれから世話になる。よろしゅうにな」

「こちらこそ」

「精霊王、このまま出られますか」

「無論じゃ。一刻でも早いほうがよい。リシュナ、宮を頼む」

「はい。皆様お気をつけて」

3人は門へ向かった。


有翼側と翼を持たない命が住む世界。

この2つを繋ぐ場所に3人は降りた。

「精霊王、お待ちしておりました」

門番が迎える。

「どうじゃ」

「精霊が流れて行く」

「見せてください」

セルジュは宝冠を柄にかける。

鍵となった剣は、静かに宙に浮いた。

鍵を前に、セルジュはゆっくり唱え始めた。

「我が名はセルジュ。
 証と名を受け継ぎし鍵の守護者なり。道を保つ者なり。
 古よりの命約を持ちてここに立つ。
 証を認めたならば応えよ」

光が揺らぐ。

「何と、、、これが?」

浮かんだ門はひびの入った鏡のようだった。

亀裂が走り細かい網目が浮かんでいる。

「思った以上のようですね」

「修復できますか」

どちらとも言えなかった。

修復が役目とはいえ、初めての試みなのだ。

「離れていてください。やってみます」

体制を立て直し、再び向き合った。

大きく息をして全神経を集中させる。

「古の命約によりこの道を保つ。
 静まりたまえ。本来の姿に戻れ」

宝冠が輝き始めた。その光が門に向う。

伝えられた通りならこれで修復ができるはず。だが

「セルジュ!」

弾き返えされ、けたたましい音と共にセルジュに向かう。

ルトヴァーユはセルジュの前に結界を張った。

そしてアズライルが結界にぶつかった光を抱く。

「どうしたというのじゃ。
 精霊が理由もなく人を傷つけて何とする。
 我らは共に生きる者。
 そなたたち精霊と息づく命を守りたいから
 ここにおるのだぞ」

「、、、、、、」

「静まれ。我らを信じてはくれぬのか?」

静かに光が消えた。

「ふう、、、、セルジュ無事か」

「ええ。何とか」

「しかし、修復はできぬということなのか」

「どうなってしまうのです、我々は。この世界は。
 何故、このようなことになってしまったのです」

精霊が揺れる。

「諦めません。手だてを探します。落ち着いて」

ルトヴァーユは優しく語りかけた。

「精霊王の仰る通り、あなたたちを守るために
 我々はいるのですよ」

「私とて」

「皆様、、、、」

3人の優しく包むような眼差しが向いた。

「とはいえ、後は何処をあたればよいかの」

これからを考える。

宮の資料も白の書庫も
ここ数日できる限りの時間を割いて調べた。 

時間がないのは確かだが
手伝ってもらっている臣にも疲れが見えている。

自分たちはともかく、少し休ませてやりたい。

「皆様が調べたのは、私の存在までなのですよね」

「ええ。続けてはいますが
 今のところ以上のことは見つかっていません」

「我の方もじゃ」

何か伝えられていなかっただろうか。

鍵の守護者として受け継いだものは名前と証。

そして、、、、、

「そうだ。私のほうにも書物があります。 
 鍵の守護者に伝わるものとして。
 そちらも当たってみましょう」

「なるほど。守護者に直接伝わっている物ならば
 手がかりがあるかもしれませんね」

「そうさの。正直我らは手詰まりじゃ。
 頼めるか、セルジュ」

「はい」

「精霊王、、、」

「必ずそなたたちを助ける。
 我らの持てる力全てでの。待っていてくれ」

「はい」

「それではここで失礼いたします。
 新たなことがわかりましたら、また」

「お願いします。セルジュ」

困難ではあっても止まることはできない。

胸に刻み、門を後にした。
















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