鍵の守護者


「バランスそのものが悪いわけではない。でも、、、」

アトリエを預かるイーリスは祭壇の前にいた。

「全体が下がってる?」

世界の礎となる4つの精霊。

精霊が持つ基礎効力を監視するのが、アトリエの役目。

偏れば、司る精霊を呼び効力の強弱を調整する。

ある日、状態を表す水晶がいつもと違っていた。

バランスそのものが偏ってるわけではない。

ただ総体として、基礎効力が落ちているのだ。

「どうしたのだろう。
 とりあえずルトヴァーユ様には報告しないとな」

例のない変化が起きれば
有翼を統べる統括へ報告しなければならない。

この世界には白の翼を持つ者と黒の翼を持つがいる。

それぞれを纏める者を統括と称し
更に有翼全体の頂点に立つ者を白銀の統括と呼んだ。

現白銀ルトヴァーユに報告に出ようとした時
精霊が来客を告げた。

「イーリス、精霊王アズライル様がおみえよ」

「精霊王、、、、はい、すぐにお出迎えを」

全ての精霊の頂点に立つ存在。それが精霊王。

イーリスは急いで正面玄関に出ようとしたが
アズライルのほうが早かった。

入ってくる姿を目に留め、イーリスは居を正す。

「遅れて申し訳ありません。アトリエを預かるイーリスです」

「アズライルじゃ。そなたがここの管理者か」

「はい。微力ではありますが、任を受けております」

「精霊の様子を見たい。水晶はどこにある」

「やはり、何かあったのですか」

「その何かを確かめに参った」

イーリスは勿論、アトリエにいる精霊達にも緊張が走った。

「こちらです。そうぞ」

アズライルを伴い、祭壇前へと引き返した。

 


「これは、、、」

水晶を目にしたアズライルは、一言呟いたきり黙った。

「バランスそのものに偏りは見られませんが
 総体として基礎効力が落ちているように思います。
 白銀の統括様にご報告しようと、出るところでした」

「そうか」

「精霊王、こちらに足を向けられたのは
 何か思うところがおありなのですか」

「こちらと向こう側を繋ぐ門に不具合が発生したと
 門番から連絡がきたのじゃ」

「不具合」

「ここで精霊の様子を見てから
 統括の城に出向こうと思っての」

全体の基礎効力が落ちていることと門の不具合。

関連付けられるとしたら、どんな説明が成り立つだろう。

アズライルは思考を巡らせる。

そして、一つの仮説を立てた。

「不具合の原因はわからぬが、不具合が原因で
 こちらの基礎効力が流れ込んでいるのかもしれん」

「キエヌ側に、ですか?」

「結果、こちらの基礎効力が落ちてしまった。
 だとすれば、急いだほうがよいかもしれぬ」

「、、、、、、」

「基礎効力は世界を成り立たせる根本じゃ。
 それが落ちるということは、存在の支えが脆くなる。
 そして向こうは、こちらほど基礎効力を必要としておらん。
 過度に渡れば、自然災害となろう」

「そんな、、、、」

「最悪共倒れの可能性もでてくる」

存在そのものが危険にさらされるなど
誰が想像できようか。

精霊がざわめき立った時、生命の精霊、マナが降りた。

「アズライル様、、、、」

「遅れてすまぬの。もっと早く足を向けるべきであった」

「急激にです。
 その分キエヌ側に流れている効力は多分かと。
 一刻も早い対処が望まれます」

「ああ。尽力いたそう」

「申し訳ありません。管理を受けておきながら
 このような事態になるまで気がつかないとは」

「イーリス、先に言ったように急な変化だ。
 そなたの責とも言えまい。
 アズライル様及び統括者と共に、対応を頼む」

「はい」

「吉報をお待ちしております」

揺れながらマナの姿が消えた。

「精霊王、これからどのように」

「ふむ、、、、」

原因究明よりも不具合を直すほうが先だろう。

精霊を落ち着かせることが最優先だ。

「不具合の修復じゃな。
 何よりも精霊達の不安を取り除いてやらねばの」

「ひとまずルトヴァーユ様に報告してまいります」

「統括の城へは我が行こう。そなたは引き続き監視を頼む。
 このような時だからこそ、離れるわけにはいくまい」

精霊が揺れる。親を慕う子のようにアズライルを取り巻いた。

アズライルもその想いをわかってか優しく返した。

「この世界に息づく全てを我は愛しく思うておる。
 最善を尽くそう」

「では、私はこちらにおります。
 変化が見えたらすぐにご連絡いたします」

「ここはそなたに任せる。頼むぞ」

「はい」

アズライルはルトヴァーユの居城へ向かった。





 



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