鍵の守護者
並行して同時に存在する2つの世界。
一方には背に翼を宿す命が存在し、もう一方には翼を持たぬ命が存在する。
それぞれに息づく地で、日々の営みは続いていた。
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背に翼を宿す命が生きる世界。 白の翼を宿すヴィクトリアは 「キエヌか。向こう側って行ったことないのよね」 「気が向いたら足を向けてみるといい。 「その服もキエヌで手に入れたの?」 「ああ。キモノと呼ぶそうだ」 セルジュが着ている服は、こちら側では見ないものだった。 白に地模様の入った長い袖。 光沢のある生地は美しい輝きを持つ。機嫌がいいのも、気にいっているからだろう。 「似合ってるわよ」 「ありがとう。ヴィクトリアもどうだい」 「そうね、、、、」 「難しいものではないよ。 確かに足元まである着丈を思えばそう違いはないだろう。 目先の変わったものも、たまにはいいかもしれない。 「あれだけの色と柄を多用しておきながら さしあたっての急用はない。 セルジュの楽しそうな様子に少しだけ興味がわいた。 「じゃあ、案内頼んじゃおうかしら」 「ああ。喜んで」 立ちあがったセルジュの胸元で光が揺れた。 「ねぇ、セルジュ」 「ん?」 「服は服でいいと思うけど 「これか。それはその通りなのだけれどね」 思い返せば、セルジュはいつでもこれを身につけている。 「そのペンダントだけは外したところ見ないわ。 「気に入っているというよりは」 セルジュはペンダントに視線を落とした。 「無くすことのできない大切なもの、だからかな」 「大切な人と会うための鍵とか」 小さく笑うヴィクトリアに、セルジュも微笑んで返した。 「大切なヴィクトリア姫のためとあらば 「セルジュが好きになる人は 「それは、、、、どうかな」 僅かにセルジュの声が落ちる。 「よかれと思ってしたことが 「セルジュ、、、、?」 「ま、それはそれとして」 セルジュは声音を戻し、ヴィクトリアの手を取った。 「遅くならないうちに行こうか」 セルジュの表情は時折かげる。 解決が難しい何かを、一人で抱え込んではいないか。 そんな心配はあった。 けれど口にしてもはぐらかされてしまう。 だから、頼られた時は友人として力になりたいと思う。 「ええ。行きましょう」 2人は浮島を飛び立った。 |
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場所は変わり、精霊王アズライルが住まう宮。 精霊王とは全ての精霊の頂点に立つ者であり 突然、宮に風の精霊が飛び込んできた。 「リシュナ殿」 風の精霊が呼び止めたのは、宮に仕えるリシュナ。 「精霊王は、おられますか」 「はい、いらっしゃいますけれど何かありましたか」 「では急ぎお伝えを。 リシュナは驚くと同時に気を引き締める。 精霊が持つ基礎効力は それが安定を欠けば、根幹が揺らぐ。 「私が間に入るよりも直に伝えてください。どうぞ」 「いえ。他の門の様子も見てほしいと 「そうですか」 ここで譲り合っても時間の無駄だ。 対処は少しでも早いほうがいい。 「では精霊王へは私のほうから。 「はい。お願いいたします」 言った風の精霊は、急いで引き返した。 リシュナはアズライルの部屋へ向かった。 |
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「アズライル様、よろしいですか」 「リシュナか。開いておるぞ」 「失礼いたします」 精霊王、アズライル。 だが王といっても、普段取り立てて何かをすることはない。 どちらかといえば象徴のような存在だった。 それもあってか、おっとりとした雰囲気を持っている。 ソファーを立ち、リシュナに歩みを寄せた。「先日キエヌで手に入れた茶を開けたところじゃ。 「せっかくですけれど後にしてください。 すっと、アズライルは気を引き締める。 「何事じゃ」 「こちらと向こうをつなぐ門に不具合が発生。 「何と、、、、」 言葉の裏に何があるのか、すぐに理解した。 「伝えてきた精霊はどうした」 「他の門の確認を頼まれたとのことで 「そうか。リシュナは宮で待機しておいてくれ。 「門ではありませんの?」 「門そのものは門番に任せてもよかろう。 「わかりました。、、、、、でも、一体何が」 「リシュナ、、、、」 存在の根源が揺らぐなど、想像したこともない。 非常事態であることは間違いないが リシュナは今までにない緊張感を覚えていた。 そんなリシュナに、アズライルは手を重ねた。 「精霊とそなた達が生きる為に尽くす。それが我の役目じゃ。 「アズライル様」 「そなたには笑っていてほしいからの」 ゆっくりと、静かにこころが凪いでゆく。 重なった手はあたたかい。 「ありがとうございます。お気をつけて」 「些細なことでもよい。何かあれば伝えるのだぞ」 「はい」 アズライルはアトリエに向った。 |
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