風が伝えし奏で


「あの浮島がそうです」

シェスタの指した浮島に下りた。

「結界を」

「はい。お気をつけて。アウラクア、行きましょう」

「御無事で、ルトヴァーユ様」

シェスタとアウラクアが飛び立ちしばらくするとキィンと鳴った。

結界が張られた合図だ。

ルトヴァーユはさらに歩いた。

そして音を立てる門の前に立った。

「ヴィクトリア、聞こえているかい」

ゆらりと影が動く。

「どうして、、、、来たの」

「そんなに薄情だと思われていたのかな」

「鍵が外れたら嘆きの想いが」

「散らしてみせるさ。
 それもできないなら、白銀に意味などないよ」

「イーリスは、、、、、」

「先のことは後で考える。今は君を取り戻したい」

「ルトヴァーユ、、、、、」

「もう一度だけ向きあうことを許してほしい。頼む」

「そう、、、、ね、、、」

抱える想いを
正直にぶつけてしまったほうがいいのかもしれない。

諦めるなら、言いたいことを言う権利はあるだろう。

「信じるわ」

「ありがとう」

ルトヴァーユは精霊石を取り出した。

「精霊たち、ヴィクトリアを受け止めてくれ」

精霊石にヴィクトリアが引き込まれていく。

そして鍵が外れたことを感じた想いが外に飛び出した。

「行かせるものか」

ルトヴァーユは門に封印をかけ直し後を追った。

















勢いよく流れていた嘆きの想いが動きを止めた。

シェスタとアウラクアの結界を破ろうともがく。

「どうあがこうが、進めないよ」

想いはルトヴァーユに向いた。それを難なく払う。

「ヴィクトリアを苦しめた報いは受けてもらおう。
 安らかな眠りなど望まない」

心が決まったとき、揺るがない心は強い力となる。

あの時闇戯にみた強さを、今はルトヴァーユが宿していた。

「白銀の命と権限において、私自身の意思として願う。
 跡形もなく消え去れ!」

一瞬だった。

ルトヴァーユの放った力は
閃光と爆音となり結界を満たした。


「く、、、、」

「これが本気になった白銀の力」

結界を支えている2人にも
ルトヴァーユの力は振動となり伝わった。

このままではルトヴァーユ自身に力が向う。

結界を解き、ルトヴァーユの元へ急いだ。

「ルトヴァーユ様」

「御無事ですか」

「ええ。大丈夫です」

門はすでに跡形もなかった。

「ヴィクトリアさんも無事ですか」

シェスタの言葉に、ルトヴァーユは精霊石を見つめる。

戻せるかどうかの判断はつかないが
第一段階はクリアとみていいだろう。

「アウラクア、もう少しいてもらってかまいませんか」

「お望みのままに」

3人はシェスタの居城へ引き返した。






「ヴィクトリア、目を開けてくれ」

ルトヴァーユは精霊石をヴィクトリアに握らせた。

石は淡い光を放つとヴィクトリアを包むように揺れる。

そして消えた。

「ヴィクトリアさん、、、、」

「信じて待つしかないか」

「信じるよ。もう一度声が聞けると。
 シェスタ、ヴィクトリアのことお願いします」

「私の方でよろしいのですか」

「動かして負担になってもいけないし
 私がつきっきりになると逆に怒られる気がするんですよ。
 わずかでも変化があったら、すぐに連絡をください」

「わかりました。心してお預かりします」

出来ることを終え、あとは待つしかない。

だが、イーリスの時よりもずっと落ち着いていた。

それはルトヴァーユの中で
何かしらの変化があった証しともいえよう。

「では、私はここまでに」

「ありがとうアウラクア。助かりました」

「何かればお声かけください。
 シェスタ、彼女が落ち着いたら紹介してね」

「ええ」

「先に失礼いたします」

優雅な女性の型の礼をして、アウラクアは部屋を出た。











その後ろ姿を見ながら
ルトヴァーユからは実感を込めて言った。

「、、、、、イーリスにしてもあなたにしてもアウラクアにしても」

「ルトヴァーユ様?」

ルトヴァーユはしげしげとシェスタを見る。

「ドレスに違和感ありませんね」

「、、、、、、」

「、、、、、、」

返す言葉が見つからず
ルトヴァーユも以外の言葉が見つからず
2人の間に妙な沈黙がおりた。

けなされているわけではないが
シェスタは無意識で己のなりに目を向ける。

「おかしいとか、そういうわけではありませんよ。
 ただ、特にアウラクアは仕草も言葉も女性に近いし
 それが当たり前というか、ごく自然に馴染んでいるから」

「確かに先ほどの礼は女性の型でしたね。
 それはそれで納得できますが、イーリスのドレスというのは」

「裾の長いローブを着ていたことがあって、あの時は」

「何だか緊張感のない話になってますね」

「ヴィクトリア?」

「ヴィクトリアさん、、、、、」

割って入った声に、2人はベッドに目を向けた。

ゆっくりとヴィクトリアの瞳が開いた。









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