風が伝えし奏で
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ヴィクトリアを居城に連れ帰ったシェスタは 詳しいことは伏せておいたが、察しはついたのだろう。 ルトヴァーユはすぐに姿を見せた。 「ヴィクトリアに何かありましたか」 「どうぞこちらに」 案内された部屋でヴィクトリアは横たわっていた。 「シェスタ、状況は」 「見つけたとき、彼女は嘆きの渓谷の前にいました」 「引き込まれたと」 「前後のことはわかりません。 「無茶なことを、、、、、」 「ルトヴァーユ様とイーリスを頼むと。 イーリスが自分に黙って嘆きの渓谷を抑えに行った時も ただ待つことしかできなかった。 だが今は違う。 ヴィクトリアを取り戻すためにできることがあるのだ。 「最後になどさせない」 「ルトヴァーユ様」 「手伝ってください。ヴィクトリアは取り戻します」 「ええ。勿論」 迷いはなかった。 ヴィクトリアが戻ることを望んでいないとしても イーリスと自分。そしてヴィクトリア。けじめをつける為にも。 「それから、白の統括にも手を借りようと思います」 「事情は知っておいてもらったほうがいいですね。 「では、お願いします」 「御意のままに」 「ヴィクトリア、必ず君を連れ戻す。待っていてくれ」 ルトヴァーユは閉じた瞳に誓いを立てた。 |
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白の統括、アウラクラの居城。外から戻ったアウラクアに務めの一人が駆け寄った。
「アウラクア様、お急ぎください」
「何の騒ぎなの。緊急事態?」
「白銀の統括様、黒の統括様がおみえになっています」
「お二人が揃ってとは。わかった」
白銀と黒の統括。
この2人が揃っての来訪となれば、迎えたこちらが落ち着かないのも頷ける。
アウラクアは部屋へ急いだ。
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一つノックをして部屋に入る。 「お待たせして申し訳ありません」 「いえ、こちらこそ急に押しかけてすみません」 「ルトヴァーユ様と揃ってなんて珍しいね、シェスタ。 答えたのはルトヴァーユ。 「私の個人的なことですみませんが ルトヴァーユは一連の経過を説明した。 「事情はわかりました。 「追い詰めてしまったのは私でしょう。 「イーリスか」 「これからのことは、周りの意見も含めて考えます。 「私からもお願いします」 「シェスタが誰かのために頭を下げるなんて、珍しい」 アウラクアはクスリと笑ってシェスタを見た。 「風の吹くまま気の向くまま。 風の精霊と同じことを言われ、シェスタは苦笑いしか出ない。 そんなにふらふらと落ち着きなかっただろうか。 「そんなに不真面目でしたか? 「まあ、お前さんをその気にさせた相手を見るのも悪くない」 ここまではシェスタに向けての言葉。 アウラクアはルトヴァーユに向きなおった。 「私にできることであれば、お力添えしましょう」 「ありがとう」 「ですがルトヴァーユ様、本人が拒んだらどうします。 「ええ」 迷いはなかった。 「こんな悲しい姿で留めておきたくありません」 まずは言いたいことをいってしまうこと。 先のことはそれからでいい。 「今更かもしれないけれど、聞こえないふりはやめにします」 「わかりました。私とシェスタは何を」 「ヴィクトリアの魂を精霊石に移します。 「私とシェスタの結界で閉じ込めて飛び出したものを散らし ルトヴァーユは頷いた。 「しかし、散らすにしても御一人では。 「助けを求めておいて矛盾しているけれど 今なら、1人で抑えにいったイーリスの気持がわかる。 他の誰かではなく、自分の手でやり遂げたいと。 譲れない、そんな願いがあるのだ。 「決まったのなら急ぎましょう。時間がたつほど難しくなる。 「わかりました。けれど、必要な時はすぐに知らせてください」 「ええ。頼りにしていますよ。ではお願いします」 3人は嘆きの渓谷に向かった。 |
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