


Night mare
「先ほどの約束のものを持参した。戻る途中でよさそうなものがあったのでな」
おおよそは精霊から聞いてはいるが、知っているといえるはずもなく手土産を差し出す。
オルガはその腕を引いた。
「すみません。とりあえず中に」
「どうした」
「説明は中で。お願いします」
アズライルを連れて部屋に戻る。フィータがゆっくりと向いた。
「アズライルさん、、、、」
「医者を呼ぶ間だけいてもらえませんか。あなたならフィータも安心できるでしょうから」
アズライルはフィータの隣に座りそっと腕を回す。
「案ずることはない。そなたを助けたいと思う心を信じるのだぞ。
戻るまで我が預かろう」
「お願いします」
オルガは外へ出た。
フィータを抱きとめたまま、アズライルは部屋を見る。
「ん、、、、あれは」
目に留まったのは窓枠に置いてある花だった。
「フィータ、少しだけよいか。花を見たいのじゃが」
「花、、、、うん」
アズライルは花に近づき注意深く確かめる。
小ぶりだが、茎には細かい棘があった。
「これが理由か」
アズライルはソファーに戻った。
「フィータ、あの花はどうしたのじゃ」
「、、、、、オルガと外に行って川の近くで見つけた。
綺麗だから、アリエルとフレデリックにも見せたくて」
折った時に棘が刺さったのだろう。
あの花は、毒とまではいかないまでも
精神面を不安定にさせてしまう作用があるのだ。
苛立ちや不安。
いつも気にならないことが、ひどく目についたり。
「苦しかったであろう。もう大丈夫じゃ。
医者に診せればすぐに楽になるからの」
「オルガは、、、、」
「戻ってくる」
待っている時間は実際よりも長く感じるものだ。
時計は動くのを止めてしまったかのよう。
「オル、、、ガ、、、」
呟く声が一つ小さくなった。
そしてようやく、オルガが駆けもどってきた。
「医者はどうした」
「どうしてもすぐには無理だって。手が空き次第、フィータ」
「、、、、、」
「フィータ?フィータ!」
「大きな声を出す出ない。
命にまで関わることではないから安心いたせ」
「原因がわかったんですか?」
「あの花じゃろう」
「花?」
オルガはアズライルの視線を追った。
「あれはアリエルとフレデリックにも見せたいからって
摘んで帰ったんです。まさか、、、、」
「精神面を不安定にする作用があるのじゃ。
毒とまではいわぬがな。
苛立ったり、些細なことが不安を与えてしまう。
知らずに抱えて、耐え切れくなったのであろう」
「フィータ、、、、」
「オルガ、、、、どこ、、、」
アズライルが離れ、入れ替わりにオルガが入る。
「いるよ。気づいてやれなくてごめんな」
「気づけというのが無理な話じゃ。己のせいだと思うでない」
「フィータはどうなるんですか」
「医者に診せることじゃ。あの花と一緒にな。
難しい薬ではあるまい。
だが、それまでは添うてやることが何よりの薬じゃ」
「はい」
「今日はここまでにしておこう。ではな」
「本当にありがとうございました」
頷き返しアズライルは部屋を出た。
「オルガ、、、、」
「大丈夫。すぐに元気になるよ」
この腕が安らぎを与える翼ともなるように。
そんな祈りをこめて、オルガはそっとフィータを抱きとめていた。