

Night mare
「今度は何ですの」
サルバスから戻ったアズライルは、前にもまして考え込んでいた。
無論、フィータのことを。
「悪夢は深刻になっているようじゃ」
「お会いになったんですか」
「今回は偶然であったがの。
顔色も悪いし、眠れぬ夜も続いておるそうじゃ。
失うまいと、あのように必死になってしまうとは」
「本当に夢見が悪いだけなのかしら」
「理由がわかるのか?」
「理由というか、一度病院にかかったほうがいいのではないかと」
「それは言っておったよ。相談してみるつもりだとな。
甘い菓子を好むそうだから、持参するつもりじゃ」
「向こう側の精霊は変わりありませんの?」
「変わらぬよ。そう、、、、何も変わらぬのに」
「アズライル様?」
自然とはただそこにある物ではなく、まして道具ではない。
共に生き、他者の命を糧にするからこそ
敬いと感謝をもって接するもの。
だが、いつから食い違ってしまったのだろう。
向こう側の精霊もこちらの精霊も
同じように言葉を伝えようとしているのに。
「いつか、この世界でも我ら精霊は忘れ去られてしまうのかの」
「アズライル様、、、、、」
「人が我らを見なくなったのか、我らが人を見なくなったのか」
アズライルはリシュナにそっと触れた。
「こうしてそなたと言葉を交わすことも叶わなくなるのか。寂しくなるの」
きゅっと、小さく鳴った。
それをかき消すように、リシュナは冷静に返す。
「まったく、いつかもわからないもしものことを
そこまで深刻にならないでください。
、、、、別れの挨拶でもないのに」
「リシュナ、、、、、」
「お人好しでのんびり屋で、御一人にしておけなくて」
「、、、、、我はそのように頼りないのか?
確かにそなたには世話になるが」
「ですから、私くらい小言が言えないと務まらないということです」
「、、、、、」
「行くのなら、遅くならないうちに行ってあげてください。
フィータさん、楽しみに待ってますよ。きっと」
アズライルは頷いた。そしてリシュナの頬にそっと口づけた。
「そなたがいてくれれば、我はよい」
「アズライル様、、、、」
「向こうで何か探してこよう。ではな」
「お気をつけて」
見送った後、リシュナは頬に触れてみる。
「アズライル様、、、、」
精霊の概念が消える。信じられないことだが、もしその日が来ても
「私は忘れませんわ」
このあたたかな気持ちを、リシュナはそっと抱きしめた。
「甘い菓子と香辛料の効いたもの。喜んでくれるとよいが」
約束の土産を持ってフィータの家に向かっていたアズライルの傍らを、風が抜けた。
「アズライル様、急いで」
「何、、、、、」
様子を見ておくよう頼んだ風の精霊だった。アズライルは速度を上げた。
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「フィータ、しっかりしろ。、、、、急にどうしたっていうんだ」 何の前触れもなく、頭が痛いといいだした。 オルガにしがみつき、小さく震えている。 「、、、、フィータ、すぐ戻る。隣に頼んで医者を呼ぶから」 「い、、、嫌だ、、、やだ」 「戻ってくる。帰ってくるよ」 「行かないで、、、、いなくならないで」 一度手を離したら戻ってこない。 そう思いこんでいるのだろうか。 フィータはなお強くしがみついた。 オルガは必死で説得に回る。 「隣に声をかけてくるだけだ。お前を助けるためだよ。 しかし、フィータは離そうとしない。 アリエルが帰るまで待つしかないのだろうか。 けれど、もし手遅れになってしまったら。 「フィータ、お前が俺にいてほしいって思ってくれるように 「オルガ、、、、、」 「今医者を呼ばなかったら手遅れになるかもしれない。 「、、、、、帰ってくる」 「絶対帰ってくる。だから少しだけ我慢してくれ」 「、、、、、、、」 「信じてくれるか?」 「、、、、、わかった、、、」 「すぐに戻るからな」 出ようとしたその時、呼び鈴が鳴った。聞こえた声は 「おらぬか。アズライルじゃが」 「本当に、、、、、天使かもな」 オルガは急いで玄関に出た。 |
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