Night mare


「明日は会えるといいね、フレデリック」

「明日も行くのか?」

「うん。だめ?オルガ」

「いや、、、、駄目ってわけじゃないけど」

思いがけない出会いから数日がたった。

アズライルとリシュナに会いたいと
フィータは毎日市場と家を往復していた。

「フィータ、名前だけしかわからない相手だ。
 偶然を待つんならともかく、毎日捜しにいくんじゃ疲れるだろう」

「だって、行ってみないといても会えないでしょう?」

「フィータ、自分の都合だけで」

「アリエル、いいよ。フィータの好きで」

「オルガ」

けん制のつもりで一言入れる。

だがフィータには無意味だろう。

フィータは機嫌のいい時の笑顔になった。

「ありがとう」

フィータがどこまで理解できるか。理解させるのか。

その判断は難しい。

「フレデリック、お部屋行こう」

抱えるフレデリックを、フィータは強く抱きしめた。

「いい子は寝る時間だもんね。お休みなさい」

「お休み」

「お休み」

小さな足音を立てながら、フィータはリビングを出て行った。

「フィータにとっちゃ、一度会っただけでも友達なんだろう」

「それが誰にでも通じるわけじゃない」

「フィータの気がすむんならいいさ。ここと市場の往復くらい」

「フィータやお前がよくても、相手がどう思うかわからないだろう。
 私だってフィータを傷つけたくはない。
 だが、全てが許されるわけでもないんだ」

「アリエル、、、、、」

「様子を見て、多少きつくなっても言うよ。
 フィータのしたいこと全てが叶うわけじゃない。我慢しろって」

「それこそ、フィータに通じる話か?」

「私を嫌いになるなら、それも仕方ないだろう」

「おい、アリエル」

「先を見ればフィータのためなんだ。憎まれ役は私でいい。
 だから、その時はフィータを受け止めてやってくれ」

「、、、、、」

「先に休むよ」

グラスを一口で空にして、アリエルも引き上げた。

「フィータのため、、、、、か」

答えを探して迷宮を歩くよう。

ふと見た窓の向こうに、道行案内のような月の光が輝いていた。


「ふむ、、、、、」

「フィータさんのこと、お考えですか」

「どうしておるかの」

有翼側に戻って以来、アズライルの頭の片隅には
常にフィータのことがあった。

「あの者は純粋な心を持っておる。
 だが人として生きるには、あまりにも脆い」

「お2人のどちらが欠けても
 フィータさんはバランスを崩して不安定になってしまうでしょう」

「2人に対する執着があのように強いとはな。
 苦しむことにならなければよいがの」

「わかりました」

「リシュナ?何がじゃ」

「そこまで気になるのでしたら、行ってください」

「よいのか?」

あの日から向こう側には渡っていない。

何に巻き込まれるかわからないというリシュナの心配を
改めて実感したからだ。

フィータたちとの出会いとて、欠片も考えなかったこと。

無論リシュナにもその心配はあるが
フィータたちのその後が気になるのも事実だった。

「私も後のことは気になっていましたから」

「そうか。礼を言うぞ、リシュナ」

「別にお礼なんか」

「いや、そなたがあってこその我じゃ。己だけでは何もできぬ」

「アズライル様、、、、」

「そなたが気遣っていたことも伝えよう。それだけで戻ってくるからの」

アズライルがその気でいても、実際は行ってみないとわからない。

だが今は頷いた。

「ではな」

「あ、アズライル様。そのお姿で行くつもりですか?」

「ん?おかしいか?」

「、、、、、、」

アズライルは着物だった。やはり自覚はどこか足りない。

「似合う似合わないではなく
 フィータさんたちにはなじみのない服なのだと思います。
 あまり目立たないようお願いしたいのですが」

「そうか、、、、、やはり」

「やはり、とは」

「先日、何やら行き交う人々が不思議そうに見ていたのでな」

(その時点で一度引き返して頂きたいのです)

胸の内だけで頭を抱えながら、リシュナは努めて冷静に返した。

「渡る前に着替えてください」

「わかった。行ってくるぞ」

「御気をつけて」

姿が見えなくなり、リシュナは大きく息をつく。

「どうしてあんなに呑気なのかしら」

己が甘いと思いつつ憎めない性格に、リシュナは苦笑いを覚えるのだった。


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