

Nigt mare
家を出たフィータはまっすぐ市場へと向かった。
そしてデニス夫人の前に立つ。
「こんにちは」
「おや、いらっしゃい。一人なのかい?」
「うん。アリエルはお仕事。
オルガは具合悪くてお休みしてるんだ。えっと、これください」
「はいよ。ちょっと待ってな」
メモを受け取ったデニス婦人は手際よく詰め込んでいった。
「オルガがこの町にきてどれくらいたつんだろうね」
デニス婦人もアリエルたちの事情は知っている。
迷子になったフィータをアリエルと一緒に捜したものだ。
兄弟2人になった後
しばらくしてオルガがフィータと来るようになった。
いきさつまでは聞かなかったが
フィータがなついていることはよかれと思っている。
だが一方で、フィータの幼さに危惧はあるのだ。
アリエルとオルガに対する執着があまりにも強いから。
「何があれば、オルガ元気になるのかな」
「フィータはアリエルとオルガのこと大好きだものね」
「うん、ずっと一緒にいるんだ。
アリエルとオルガとフレデリックとみんな」
それは哀しいほど純粋な願い。
「、、、、、叶うこと祈っているよ。はい、お待たせ」
「ありがとう」
笑顔で受け取り、来た道を引き返す。
その後ろ姿を、少しだけ悲しい思いで見送った。
「お買いものできた。早く帰らなきゃ」
両手でしっかりと抱え込み帰り道を急ぐ。
すると同じように逆からかけてくる男がいた。
互いを認識しよけようとしたのだが、運悪く同じ方向に動いてしまった。
「うわ」
「気をつけろ」
一言で男は走り去った。
そしてフィータの足元を転がっていくもの。
「あ、待って」
落ちたものを追いかけ走り出した時
「どけ!」
「え?」
一瞬だった。
目の前に馬車が見え、そしてぐいと腕を引かれた。
「下を見たまま車道に飛び出すなど、無茶をするでない」
「、、、、、、」
自分の腕を引いた相手を、フィータは無言のまま見つめた。
蒼とも翠ともいえる瞳は宝石のように綺麗だった。
「どうした。どこか痛むか?」
「う、、、ううん。ありがとう。あ」
フィータは道に散らばったものを拾い集め、もう一度抱え込んだ。
だがいくつかをだめにしてしまった。
「どうしよう、、、、。お買いもの」
1人でできると言って家を出たのにできなかった。
それがシヨックでフィータは立ち尽くしたまま動けない。
いうことをきけない悪い子。そんな言葉にすり替わる。
相手は死にかけたことよりも買い物を気にするフィータを
不思議そうに見ていた。
「命のほうが大切であろう。あのままではそなたが」
「、、、、ごめんなさい」
「我に謝られても困るがの」
あたりを見回し、ベンチに目をとめた。
「立っていては他の者にも迷惑になる。座るとしよう」
そっと手を引き、並んでベンチに座った。
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「そなた、名はなんと申す。我はアズライルじゃ」 「フィータ」 「ではフィータ、家はどこじゃ」 「帰れないよ」 「、、、、、」「だって、お買いもの一人でできるって約束したのに」 「人とぶつかってしまったのじゃ。わざとではない。 「いうこときいていい子にしてなきゃ どうにもかみ合わないフィータの返答に それを確かめるように問を重ねていった。 「父と母は健在か?」 「え?」 「家族なのであろう。今名を出した者たちは」 「、、、、アリエルはアリエルだよ。 「では父と母は別に暮らしておるのか?」 「お父さんとお母さん」 「そうじゃ」 「えっと、、、」 記憶をたどるようにフィータの視線が揺らぐ。 残っているのは一枚の写真のような4人でいる風景。 そしてある日、もう会えないとアリエルから教えられた。 「もう会えないって、アリエルが」 「、、、、、」 アリエルとはどういった存在なのか。 血縁なのか一緒に暮らしている他人なのか。 考えかけるが、自分が知りえる話ではないし ともかく今は家に帰さなければ。帰る家があるのなら。 「フィータ、大切な相手と会いたいであろう。 「う、、、、、」 (どうしたものか) どうにか言い聞かせようと語りかけるが |
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