



重なる環
「痛っ、、、、」
「動かないで」
解こうと試みるが片手ではおぼつかない。
「片手では、どうにもやり難いですね。あなたのほうで解けそうですか」
「えっと、、、」
アージュは腕飾りに目を向ける。すると
「あ、、、、これ」
「この腕飾りが何か」
(ランス様が丘で拾った物と同じ)
闇戯の腕にあるのはランスが拾った腕飾りと同じだった。
似ているというレベルはなく、全く同じだと思う。
だが今は、絡まった髪を解くことが優先。
アージュも慎重に解こうとするが焦りが先行してしまう。
「住んでいる家はこの近くですか」
「ええ」
「このまま一度帰ったほうがいい。
あまり人が集まらない方がいいでしょう」
「、、、、そうですね」
エルフ耳を見られて騒ぎになるのも困る。
共に暮らすランスはもちろん
周辺どんな噂が立つかわからない。
「方向だけ教えてください。ゆっくり歩きましょう。
出来るだけ離れないようにして」
「はい。とりあえず、あの玄関に花がある家まで行って下さい」
「わかりました」
歩調を合わせ、家に向かった。
「ここです」
「入りますよ」
扉を開け、そのまま奥に進んだ。
「ランス様、戻りました」
「お帰り。アージュ、そちらは」
多少の警戒を含め、闇戯を見る。
「あの、風で髪が流されて闇戯さんの腕飾りに絡まってしまったんです。
すぐには解けそうにもなくて、とりあえず戻りました」
「そうか」
ランスが気にかけている物が何か
無論、闇戯にもわかる。
「大丈夫ですよ。彼女が水の精霊だとわかっていますから」
その一言で、ランスも理解した。
「あなたも、向こう側の方ですか」
「ええ。細かい話は後にして、先に彼女を」
「確かに。アージュ、見せてね」
「切っちゃってもいいですよ」
「女の子にそれはやりたくないな。
どうしても無理だったら仕方ないけど」
言いながら闇戯の手元を見る。
そして、ランスも気がついた。
「この腕飾り、、、、」
「彼女も気になっていたようですが、これがどうかしましたか」
「後にしましょう」
そのまま格闘が始まり、そしてようやく。
「取れたよ。アージュ」
切ることなく、解けた。
「痛くない?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
「よかったですね。切らずにすんで」
「はい」
「では、1つ片付いたところで聞かせてもらえますか」
シャラリと小さく鳴った。
「この腕飾り、2人とも何が気になっているんでしょう」
この腕飾りは、特注で2つ作らせた物。
自分とジャステアしか持っていないはずだ。
何故アージュとランスが反応するのか、見当がつかない。
「どうぞ、座ってください。アージュ、持ってきてくれる」
「はい」
勧めに従い、ソファーに座った。
暫くしてアージュが腕飾りを持って戻った。
「これ、同じ物ですよね。ランス様が丘で拾ったんです」
「、、、、ええ、確かに同じものです」
ジャステアが塞いでいた理由も、これでわかった。
失くしたことを言いだせず、一人気をもんでいたのだろう。
「この腕飾りは、特別注文で2つ作らせたものです。
ですから、これを持っているのは私とジャステアだけですが
そのジャステアがここ数日塞いでいましてね。
これで理由がわかりました」
「では、こちらはお預けします」
闇戯は腕飾りをはめた。
寄り添う2本の環が重なる。
「確かにジャステアに返しておきます」
「ジャステアさんも安心できますね。よかった」
劣化を遅らせて共に在りたい相手。
特注ということからも
ジャステアの存在の大きさがわかる気がした。
そしてジャステアも腕飾りを気にしていたのなら
互いを必要としているのだろう。
それがアージュは嬉しかった。
創り手を失ったホムンクルスが独りで眠りにつく様は
静かすぎてあまりにも悲しい。
「ジャステアさんが好きな物って、何ですか」
「ジャステアの?何だろう」
屋敷に嗜好品らしき物はほとんどない。
あえていうなら、ジャステアが時々持ち帰る花くらいだ。
「あの里は何もない所だから、時々花を持って帰りますよ。
特段固執しているものは無いと思いますが」
「じゃあ、お花持って帰ってください」
「アージュ?」
「水の精霊が持つ穏やかさ。凪ぐ水面のような安らぎ。
それを、たくさん詰め込みます」
アージュと闇戯の手が重なった。
それだけで、緩やかな波紋が心に浮かぶのは
アージュが水の精霊だからだろうか。
「ありがとう」
「アージュ、一緒に行って選んできたら」
「あ、、、そうですね。買い物もまだだわ」
「お礼にそちらも手伝いましょう」
「今度は腕飾りの無いほうに立つんだよ」
「はい。気をつけます」
「ではもう少し、レディをお預かりしますね」
「ええ。お願いします」
小さな手を取り、闇戯は店を出た。
「水の精霊か、、、、。
今更だけど、僕の存在はどんな意味があるんだろう。誰が、どこまで知ってる?」
遥か昔、この地に舞い降りた翼に想いを馳せた。
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「お帰りなさいませ。闇戯様?」 花を抱え帰った闇戯に 「いつもあなたが持って帰ってくれるから 「そうでしたか」 選んだのは、穏やかな優しい黄色の花だった。 「心が温かくなるような、優しい花束ですね」 「飾っておいてください。終わったら私の部屋へ」 「え、、、あ、はい」 花を預けた闇戯は、先に自分の部屋へ入った。 失くしたことに気がついたのだろうか。 よほどのことがなければ、外しはしない。 「、、、、、悪いのは私なのだし」 ともあれ、聞かないことには先に進まない。 優しく花を抱いて、いつも花を飾る場所に向かった。 |
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