四重奏 〜 カルテット 〜


「う〜ん、、、これをこっちに持ってくればいいのかな」

「それも方法だけど、二度手間になりそうだね。その手前は?」

「あ、そうか」

パズルを解きながら
ああでもないこうでもないと言っているカーネリアと愁馬。

まるで兄弟のような2人を、ファルアは微笑ましく見ていた。

キエヌに戻ってからのカーネリアは
クロシェ次期当主として動くことが多くなった。

またカーネリアには姉が一人いるのだが
すでに嫁いでいるため、会うことは少ない。

そうなると必然的に話せる相手も限られてくる。

また、同じことは愁馬にもいえた。

彩華月の家族として迎えられている以上、使用人は仕える立場。

同じ年頃の話し相手といっても、いうほど簡単にはできない。

両者の事情が一致したこともあり
カーネリアと愁馬が打ち解けるのに、そう時間はかからなかった。

「お茶がはいりました。一息いれてください」

頃合を見計らい、ファルアは一声かける。

「ありがとう。ファルアさん」

愁馬に続きカップを取ったカーネリアが眉をひそめた。

ごく僅かな動きではある。

だが、マスターの仕草からどんな変化にも対応できるよう
教育を受けたファルアが気づくには十分だった。

「申し訳ありません。お取替えいたします」

「、、、、カーネリアさん?」

何が気に障ったのかと
愁馬が不安そうにカーネリアを見る。

実際、主人の客に対し非礼があれば罰を受けるのは当然。

それがファルアの立場だ。

カーネリアは口をつけずにカップを置いた。

貴族の中でも上位に位置するクロシェの嫡男。

知らずに誇りと威厳はカーネリアの身に着いている。

ファルアはその生粋ともいえる性質を強く感じていた。

「今までとは違う。この香り、クロイラの花じゃない?」

「はい、クロイラです。お出しするのは初めてですが」

「今までの物に戻してくれないか。
 クロイラの花は、前に気管支を痛めたことがあるんだ」

「失礼いたしました。すぐに」

カーネリアの嗜好は出来るだけ調べたが
そこまでは至らなかった。

念のためにと用意しておいた、別の葉でいれなおす。

「じゃあ、僕も」

そして愁馬も、自分のカップをファルアに渡した。

「ほんと愁馬はよく気がつくね」

愁馬といる時間が増えるにつれ、カーネリアは感心する。

だが正直、利口すぎる気がしなくもない。

身について自然に出るならいいが
いい子でいようと常に気を張っているのなら
息苦しくなるのではないか。

そんな懸念さえでてくるほどだ。

「愁馬は、何かほしいものあるの?何処かに行ってみたいとか」

「欲しいもの?、、、、、ううん、ない」

はっきりとした答えが返る。

「瑞樹さんが一緒においでって言ってくれた。
 おじいさまも、ここにいていいよって抱きしめてくれた。
 だから、ここにいられるだけでいいんだ」

必要とされること。それが生きるためには必要なのだ。

愁馬はそれを、理屈ではなく体得している。

カーネリアはそんな愁馬の小さな心を思う。

「そうか。今度は僕の家にもおいで」

「いいの?」

「勿論。友達を呼ぶのに理由なんかないよ」

「友達、、、、?僕のこと」

「そのつもりだけど、駄目かな」

「ううん。ありがとう」

愁馬は明るい笑顔を見せた。


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