


四重奏 〜 カルテット 〜
「あのお方が元帥閣下なのですね」
「、、、逃げたくなってきた」
「大丈夫だよ。けっこう気さくな方だから」
「いいんですか?そんな」
暫くするとユラカイトはカーネリアたちの中に入った。
「ご出席頂けて光栄に存じます。元帥閣下」
カーネリアに倣い、一同頭を下げる。
「キエヌに戻ったと聞いて安心したよ。
しかし戻るなり金脈発見とは驚いたな」
「誰よりも父が驚いていますよ。鑑定の結果質もよいとの事です。
早速金細工師を探し始めました」
「そうか、楽しみだ。瑞樹たちも変わりないか?」
「はい。本日は都合がつきませんでしたが
父からも閣下のご健勝を願いますと預かっています」
「よろしく伝えてくれ。愁馬も元気そうだな」
「はい。ありがとうございます」
精一杯のお辞儀で返した。ユラカイトには優しい微笑が浮かんだ。
そしてざわめく客にくすりと笑う。
「瑞樹が出席となると、令嬢たちが嬉しそうだ」
「私ではなく閣下がいらっしゃるからですよ」
気さくとの言葉どおり話のすすむ4人の傍らで
フィエラと紅響は静かに聴いていた。
その2人にユラカイトの視線が向く。
「そろそろこちらを紹介願いたいのだが」
ぴくと、背筋が伸びる。
「僕たちの共通の知り合いで、フィエラと紅響です」
「フィエラです」
「紅響と申します。何分このような場所は不慣れゆえ
失礼ありましたらご容赦ください」
「元帥府を預かるユラカイトだ。
フィエラ、、、ああ、道で子供を庇ったという」
「え、、、、あの時のことをご存知なんですか」
「カーネリアから聞いている。
馬車の前に飛び出してしまった子供を助けたと。
誰にもでも出来るわけではないだろう。
勇気と優しい心を持っているのだな」
「あの時は夢中で、、、。あ、ありがとうございます」
「フィエラは元帥府にも納めさせて頂いている
ローゼンタの絵付師なんですよ」
「え、元帥府に入っているんですか?」
「ああ、うちから幾つか。
納め先、フィエラたちには伝わらないのか?」
「あの、全部は聞いていません。
僕が携わらない注文もあるから」
「ローゼンタの品はどこよりも造りが丁寧だ。
美しさと質の良さは職人の努力の結果だろう。
私も大切に使わせてもらっているよ」
「ありがとうございます。工房の皆も喜びます」
ローゼンタの職人であることはフィエラの誇り。
それを認められ、フィエラの心も少し和らいだ。
「さて、あまり独占しても恨まれるかな。ではまた次の機会に」
「はい。ありがとうございました」
最後はカーネリアが返し、ユラカイトは次の集団に移った。
「さ、抜けるぞ」
視界から外れたところでそう言った瑞樹を
フィエラと紅響は驚いて見返す。
「囲まれたら面倒だからな。まして初めてじゃ、抜けられなくなる」
「一緒に出たほうがいいよ。来てくれてありがとう。
今度はお茶に誘うね」
「えっと、、、」
「フィエラ、慣れている皆様が仰るのですから、従いましょう」
愁馬が瑞樹をつつく。回りが動き出した合図だ。
「じゃあな、カーネリア」
「気をつけて」
「行きましょう、フィエラ」
「う、うん」
状況が飲み込めないまま、瑞樹の後に続き出口へ向かった。
その瑞樹たちを取り逃がした面々から、残念そうな視線だけが向く。
「いつもながら鮮やかだね。さて、、、後は父さんに任せるか」
瑞樹たちのことで質問攻めにあう前にと、カーネリアも広間を後にした。
「上手くいったな」
「あの、ほんとによかったんですか」
「カーネリアの了承済みなんだから、気にしなくていい。フィエラ、自分達が乗ってきた馬車は待たせてあるんだろう?」
「はい。目印はつけてきたから、大丈夫だと思います」
話すうちに乗合所についた。
「それじゃ先に。今度はうちの招待状も送るよ」
「またお店にもきてくださいね」
「うん。またお茶ご馳走になりに行くね。ありがとうございました、瑞樹さん」
「失礼いたします」
それぞれ馬車に乗り込み、家路についた。