四重奏 〜 カルテット 〜


夜会当日。

向かう場所が場所だけに流しの馬車というわけにはいかず、寄り合い所から御者付きで一台借りた。

御者のほうも、向かう先がクロシェと知ると緊張した面持ちで走り出した。

やがて、広大な敷地を擁するクロシェ邸が見えてきた。正面から次々と馬車が入っていく。

「盛大ですね」

「ものすごく場違いな気がしてきた」

「此処まで来たのですから、心して決戦に向かうのみですよ」

フィエラたちの馬車も門をくぐり、まとまっている一角についた。

更に屋敷に向かって歩いていると

「フィエラ?フィエラじゃないか」

「え?あ、瑞樹さん」

覚えのある声に振り向けば、いたのは瑞樹と愁馬だった。

「ここで会うとは思わなかったな。
 カーネリアと知り合いだったのか」

「こんばんは。フィエラさん」

「こんばんは。瑞樹さんたちも招待されていたんですか」

「カーネリアは親戚筋なんだ。正確には父さんの代理」

「親戚筋?じゃあ、、、」

フィエラは画廊の店主としての瑞樹しか知らなかった。

カーネリアの親戚筋となれば
それなりの名門ということだし実際その通りである。

今まで失礼がなかったかと、とっさに思考が回る。

「どうかしたか?」

「い、いいえ。なんでもないです」

「フィエラ、どちら様ですか」

「紅響は初めてだね。画廊{銀月}オーナーの瑞樹さんと愁馬さん。
 今一緒に住んでる紅響です」

「初めまして。紅響と申します」

「初めまして」

「愁馬です」

「でもよかった、見つけてもらえて。
 僕たちには場違いな気がしてたんです。
 それに、知り合いって言うか
 通りで一回助けてもらっただけだから」

「、、、、一回会っただけの相手に招待状出したのか?」

個人的な催しに招くならともかく
一回会っただけの相手から招待状がくれば
受けたほうが戸惑うのは当然のことだろうし、逆に失礼にあたる。

その辺りはまだ子供だなと、瑞樹は思った。

「私的な茶会なりに招いてから
 慣れた頃に夜会に招くのが手順だけどな。
 かえって、気を使わせただろう」

「でも、紅響もいてくれるし瑞樹さんたちにも会えたから大丈夫です」

「瑞樹さん、そろそろ入ろう」

「ああ、時間だな。行こうか」

4人揃って、屋敷の玄関をくぐった。


揃って入った4人を見つけると、カーネリアはすぐに足を向けた。

「来てくれたんだね。ありがとう」

「お招きありがとうございます。カーネリア殿」

「先日は御世話になりました」

「こんばんは。カーネリアさん」

「いらっしゃい、愁馬。瑞樹さんにはまた振られるかと思ったけど」

「たまには顔出さないと勘が鈍るからな」

「紹介するね」

「知ってるよ。フィエラだろう」

先に言われ、カーネリアは2人を見る。

「画廊で扱っている品の製造元で働いてるんだ。
 店にも顔出してくれるしな」

「そうだったんだ」

「玄関で会うまでは、お2人が親戚なんて思いもしませんでした」

「どこでどう繋がるかわからないね。紅響さんも?」

「こちらは初めてだけど、自己紹介は終わってるよ」

カーネリアを含め談笑の進む一団に客の視線が集まっていた。

カーネリア、瑞樹共に名家の跡取り息子。

まして瑞樹が他家の夜会に出るのは珍しいことだった。

年頃の令嬢は勿論、その親たちが浮き足立つ。

少しでも近づきになろうと数人が動いたところに、侍従が杖を鳴らした。

「元帥閣下が入られます」

声に続き、元帥ことユラカイトが入る。列席者からの一斉の礼を受け、ゆっくりと間を回り始めた。


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