


抱き影
部屋を出ると、エントランスにいる2人が目に入った。1人はセナ。そしてもう1人。
「あれは」
「私が来た時にはいなかったな」
「、、、、セナの主か」
この場に居合わせるのならば、セナの翼を握っている男だろう。
その男がセナの頬を打った。
「セナ!?」
「ルディ、待て」
思わず駆け寄ったルディの後をレイスも追う。
その2人に、男は銃を向けた。
「セナの悪戯が過ぎたようですね。手出し無用です」
「、、、、ロバート、、、」
セナは今でもカゴの鳥だといった。
その言葉通り、ロバートはセナを捕らえる。
「あなたにとってセナは」
ルディはどこかで否定を願った。が
「美しい鳥ですよ」
ためらいも迷いもなく、当然だとロバートは返した。
「セナの翼は私の手にある。この鳥は本当に美しい」
背中を向けたセナは何も言わなかった。
レイスは思い出す。自分に同じ言葉を向けた男を。
「似ているな、お前」
「レイス?」
「昔同じことを言われたよ。お前の翼はこの手にある。
自由に飛ぶことなど、けして許さないと」
「それは、、、父が」
自分を買った男であり、ルディの父親。
セナとロバートの姿は、昔の自分とあの男だった。
「お2人には礼をいうべきでしょうね」
「何の礼だ」
「この美しい鳥を育ててくれた礼ですよ」
「やめろ」
セナは唇をかむ。自由など望めない。わかっているから、これ以上聞きたくない。
「僕のしたことが気に入らないなら、どうとでもすればいい」
「戻ろうか。では」
礼儀正しい会釈をし、鳥を連れ去った。
追いかけようとしたルディをレイスは引き戻す。
「やめろ」
「セナは、、、、鳥のままなど望んでいない」
「私たちに何ができる」
「でも、このままだなんて」
「わかってるだろう。セナが翼を取り戻したいと望むなら
それはセナ自身にしかできないんだ」
「、、、、、」
わかっている。
レイスが自分で鎖を切ったように
セナ自身が望まなければ、動かなければ不可能。
わかっていても、、、、
「父は、、、あんなふうにあなたを見ていたんですか」
「ルディ、、、、、」
「あの人は、、、、、私は」
「お前とあの男は違う」
「いいえ、、、、いいえ!」
「ルディ、落ち着け」
「私の中の父はどうすれば消せるんですか!」
「私だって同じことをしたんだ。お前だけじゃない」
「あなたを主に替えたのは父でしょう。翼をもぎ取った。
そう、、、この手は、、、あの人の、、、」
見開いた瞳は両の手を見つめる。
「私がきえれば、、、、影も消える」
「ルディ、しっかりしろ。
アントワネットのところに戻りたくないのか」
「アン、、トワネット、、、」
「待ってるよ。お前の過去も苦しみも罪も
全部知ったうえでお前を待ってる。そうだろう」
「、、隣にいる、、、資格など、、、、」
「、、、、どこ見てる」
「、、、、、」
揺らぐ視線はどこを見ているのだろう。引き戻さなければ。
パンと、レイスの平手が鳴った。
「お前だけが、、、、自分だけが苦しいと思ってるのか?
私が何もなかった顔でガレリアの隣にいるとでも?」
「レイス、、、、」
ゆっくりと視線が戻る。
「怖いさ。どんなにガレリアが許すと言ってくれても
泣き叫んだ顔を忘れるなんてできやしない。
それでも、ガレリアの隣で生きたいと望んでいる」
「、、、、、」
「同じなんだよ。私とお前は。同じ罪を背負って生きてるんだ」
「、、、レ、、、ス、、っ」
レイスの前で初めて泣いた。
「一生付き合うから」
抱きしめたレイスの頬にも、一すじの涙が伝っていた。