抱き影


指定された場所に向かうレイスを2人は静かに見送る。

「レイス、帰ってきてね」

「私が生きたいと望むのはお前の隣だけだ」

「うん」

「レイス、これ」

アントワネットはレイスの手に石を乗せた。

「気休めにもならないとは思うけど」

それは、昔アントワネットがルディに贈った護り石。

そして、長い年月を過ぎて2人の手元に返ってきたもの。

「心強い味方だよ。行ってくる」

「気をつけて」

「お願い」

レイスの姿が見えなくなっても、2人は動けなかった。

「ごめんなさい。あなたにも辛い思いをさせてしまうけれど」

「アントワネットさん」

「ルディと生きるって決めた時
 こうなることもあるって覚悟したつもりだった。
 でも、いざ現実になるとどうしていいのかわからなくなって」

「、、、、、僕も同じです。
 あの鳥かごでレイスの傍にいたいって言った僕に
 レイスはこう返しました。
 殺されるかもしれない、それでもかって」

「、、、、、」

「それでも。レイスの傍にいることは危険かもしれないけど
 僕は隣にいたい。アントワネットさんもそうでしょう?」

「、、、、ええ」

唯一絶対の存在。代わりなどいない。

アントワネットにとってのルディであり
ガレリアにとってのレイス。

その逆もしかり。

「信じて、待つことが僕たちの役目だと思います」

「そうね。ありがとう、ガレリア」

2人はただ無事を祈る。深く静かに夜が過ぎて行った。


セナはもう一人の登場を待った。窓から外を見ていると、錆びた門を男がくぐった。

「あれが、今のレイス」

窓から身を乗り出したセナをレイスも見返す。

「役者が揃った」

セナは口を塞いだままのルディに告げた。

「レイスが来たみたいだよ」

「(セナ、これ以上は)」

何をしてもセナ自身が傷つくだけ。自分とレイスを撃ち抜いたところで、セナが喜ぶとはとうてい思えない。

止めたいが、セナはそのまま背を向けて部屋を出た。


一階のエントランス。かつての鳥と主が向き合った。

「レイス、、、、」

「ルディはどこだ」

「もう、鳥のことなんか忘れちゃった?」

「全てを覚えてなどいない。
 どれだけの鳥を送り出したと思っている」

「そう。あなたは変わってないのかな」

「平手をついて謝ったところで
 お前の気がすむとは思えないしな。
 私とルディを殺せば、それで満足か?
 慰めの言葉がほしいわけでもないだろう」

突き放したもの言いに、何故かセナはほっとしていた。

少なくとも、ルディに覚えた苛立ちはない。

「試してみようか。持ってきてるんでしょう」

セナはレイスに銃を向けた。レイスもセナに向けて構える。

銃声が響いた。


その音はルディにも届いた。最悪の幕引きが脳裏をよぎる。

2人とも倒れ、自分はここに繋がれたまま終わるのか。

そして、残ったアントワネットとガレリアはどうなるのだろう。

浮かんでは消えるいくつもの思い。と、足音が聞こえた。

そして届いた声は

「ルディ!何処だ!」

レイスの声だった。

足音と扉を開ける音が交互に聞こえ、レイスがたどり着いた。

くつわを外し、縄を切る。

「無事か」

「私は大丈夫です。
 アントワネットはどうしてますか?それにセナは」

「セナ、、、、か。鳥の名前なんか忘れたな」

「まさか」

「生きてる。私もセナも、わざと外した。
 アントワネットも無事だ。ガレリアと2人で待ってるよ」

「よかった、、、、、」

ひとまずは皆無事であったことに胸をなでおろす。

だが、セナの心は楽になったわけではないだろう。

「セナは、、、、どうしたらいい」

「何を話したか知らないが、今は自分のことを考えろ。つかまれ」

「大丈夫。歩けます」

ルディはゆっくりと立ち上がり歩きだした。


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