抱き影


ガレリアとアントワネットは無言のまま2人を待った。

時計の音すらも、どこか遠くで聞こえているようだった。

と、、、扉が開いた。

「ルディ、、、、、」

「遅くなって悪かった。無事だよ」

「心配かけましたね。すみませんでした」

「怪我は」

「大丈夫です」

「、、、よかった、、、、、」

声の詰まるアントワネットを、ルディはそっと抱きしめた。

この場所をただ信じていたい。アントワネットの隣を。

「一緒に生きてください。私と」

「休んでろ。怪我はないが、少し眠ったほうがいい」

「部屋に行きましょう。あったかいお茶をいれるわ。
 レイス、本当にありがとう」

「頼むよ」

頷き、ルディに添って部屋に入った。

2人になり、ガレリアもまたレイスを抱きしめる。

「よかった、、、、、、帰ってこなかったら、どうしようって、、、、」

「ガレリア、、、、」

背負ったものがどんなに重く苦しくとも生きる。這ってでも。

「お前がいれば、、、、」

「いるよ。レイスと一緒に」


ルディを落ち着かせ、3人になった。

「やっぱり昔の鳥だったんだ」

「ああ」

「復讐だったのかしらね」

「何をしたかったのか
 自分でもよくわからなかったんだろう。
 私にも銃は向けたが、お互い外して撃ったしな」

ロバートのことまでは話さなかった。

ルディと自分にだけかけた戒め。

それがせめてもの、奪った翼の代償だから。

「落ち着くまでしばらくかかるかもしれない。
 見ているほうも辛いだろうけど」

「そうね、、、、。でも、大丈夫。
 ルディと生きていくって、決めたんだもの」

「2,3日はキエヌに残るつもりだ。
 何かあったら、宿のほうに連絡をくれ」

「ええ。ありがとう」

「僕は、幸せなんだね」

ガレリアがぽつりと言った。

「僕も、同じことをしてたかもしれない。
 ううん、僕やこの前会ったオルガさんみたいに
 今がよかったって、そう思える鳥のほうが少ないのかな」

「ガレリア」

「、、、、、そうかもしれないわね」

ロバートの、ルディの父の言葉がレイスに中で響く。

「お前が私を救ってくれた。
 ルディもきっと、お前やアントワネットに救われてる」

「お互い様よ」

「レイス、、、アントワネットさん」

「だからこそ、、、、、」

アントワネットが飲み込んだ言葉の先に乗る願い。

だからこそ、できるなら翼を取り戻してほしい。

願わずにはいられなかった。


「ん、、、、けほ」

アルコールでむせかえる。

足もとがふらつき歩きだしたとたん膝が折れた。

そのまま床に転がる。

「鳥、、、、飛べない鳥か」

霞む視界に影が入った。

「ロバート」

「つかまれ」

引き上げてソファーに戻す。

「やけ酒か」

「そんなんじゃない」

「ま、何も考えたくない時は、酒に溺れるのも方法ではある」

何を考え何を思っているのか。

ロバートはほとんど話さない。

「女を抱こうとは思わないの」

「何の話だ。いきなり」

「別に、、、、金で鳥を買う必要があるとも思えないから」

「妬いてくれているのなら、嬉しいけどな」

一口含むと、セナの顎を取り口移しで流し込む。

こくりと、喉が鳴った。

「ここを出たいのなら、私を殺す方法を考えろ」

セナは驚いてロバートを見る。

「殺されてもいいっての」

「お前にならよかろう」

「、、、、、何考えてるのさ」

ロバートにとって自分は鳥。

好きな時に足を向け抱きにくる。

だが、その愛撫はこの身体を優しく包み
ロバートの腕の中はあたたかかった。

いっそ乱暴な男なら憎むこともできようが。

「、、、、鳥でもいい」

ソファーを立ったセナはロバートにしがみついた。

「だから、1人にしないで。捨てないで」

「命ある限り、放しはしないさ」

「ロバート、、、、ん、、、」

潤んだ瞳で見つめてくるセナを、ロバートは優しく抱いた。


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