抱き影


雨はやみそうにない。

あれからだいぶ過ぎた気はするのだが、セナは動く気配がなかった。

「セナ、そろそろ起きないと」

布一枚あって丁度いいくらいだ。このままでは本当に体を壊す。

「ん、、、、」

小さくうめいた。

「セナ?」

「う、、、んっ、、う、、く、、るな、、こない、、でっ、、」

寝言ではなかった。

「セナ!起きて!」

「、、、、っ!」

セナは飛び起きた。

「はぁ、、、最悪、、、」

「セナ、、、」

一体何をしているのだろう。

自分で自分を追い込んで、何を望んでいるというのか。

わからない。ただ、何かが胸を塞ぐように苦しくて。

もやのように晴れない何かが、自分の中にあって。

どうしていいのか、わからなくて。

セナは酒の瓶を抱えて飲み干し床に投げた。

「、、、、」

「憐みなんていらない」

ソファーを降りたセナだが、すぐに座り込んだ。

「セナ、この縄解いてください。逃げないから」

「信じると思うの?」

「本当です。朝になったら、もう一度繋いでくれてかまいません」

「、、、、、」

「今だけでいい。信じて」

包んでやりたかった。せめて肩を並べるだけでも。

今のセナの主は、セナを鳥としてしか見ないのだろうか。

眠るまでただ隣にいる。そんな夜を、望むときだってあるだろうに。

「まったく、、、、こんな時に人の心配するほど馬鹿だったっけ」

セナはルディの隣にもぐりこみ、ことりともたれた。

「雨、、、、やまないね」

「玉響と、呼ぶのだそうですよ」

「何が」

「これくらいの、静かな雨のことです。
 雫がはねる音が綺麗に響くと」

「、、、、、空が泣いてる音だ」

「、、、、、」

「鳥も、どこかで雨宿りしてるんだろうな」

セナは瞳を閉じた。

「帰る場所はあそこだけ、、、、。ルディ、もう少し付き合って」

「セナ、、、、」

玉響が、静かな夜を飾っていた


鳥の声がした。

「朝、、、、?少しは眠れたのかな。ん?セナ!?」

隣にセナはいない。

「鳥かごに戻ったのか、、、」

雨は上がり、明るく晴れた空だった。明けない夜はない。長雨もいつかは止む。

だが、セナの心にあたたかな日差しが戻る日はくるのだろうか。

「セナ、、、、」

せめて、セナがもたれて休むことを今の主が許してくれたなら。

ルディは願った。


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