抱き影


ルディがさらわれてから2日。時が止まったのかと思うほど、一日が長い。

必死に耐えてきたアントワネットの元に、ようやく2人が到着した。

「待たせて悪かった。何があった」

「レイス、、、、」

途端、こらえてきたものがこみ上げる。

「お願い、助けて」

「アントワネットさん?」

「あの人、、、、ルディを助けて」

アントワネットはレイスの胸に顔をうずめ、泣いていた。

気丈なアントワネットに慣れている2人は言葉にならない。

とにかく落ち着かせるのが先と
レイスはそっとアントワネットを包んだ。

暫くして、アントワネットはゆっくりと顔を上げた。

「ごめんなさい」

「一人で不安だったろう。出来ることはする」

「何があったんですか」

「、、、、ルディがさらわれたの」

「え、、、、」

「、、、、、、」

「そんな、、、誰がそんなこと」

「ひとまず、座って」

促され、とりあえずはソファーに座る。

「向こうから何か言ってきたか」

「この手紙が」

アントワネットは届いた手紙を見せた。目を通したレイスは、やはりと納得する。

「私を呼んだってことは、昔の鳥だな」

ルディと自分を恨んでいるのなら
自分が主だった頃の鳥だろう。

多すぎて、絞り込むのは不可能だ。

無事に戻れるかは、わからない。

それでも、ルディを見殺しにはしたくなかった。

「ガレリア、ルディを見殺しにはしたくない。行かせてくれ」

「レイス、、、、」

勿論、ルディを助けたいのはガレリアとて同じことだ。

だが、相手がかつての鳥ならば最悪の事態も考えられる。

その狭間でガレリアは揺れた。

「ルディさんを助けたいのは同じ。、、、、本当だよ。だけど」

わかったと、その一言を言ってしまえばいい。

なのにそれが出来ない自分が悔しかった。

「、、ごめん、、、」

「愛してる。何があっても、永遠にお前だけだ」

「レイス、、、」

「私たちが恨まれるのは仕方がない。それだけのことをしてきたからな。
 だが、そのことでお前を苦しめているのはすまないと思う。
 今回無事にルディを助け出せたとしても、また同じことが起こるかもしれない。
 私の傍にいるかぎり、次はお前かもしれない。それでも、共に在りたい」

「僕だって、、、レイスといたい。だから」

「帰ってくる。ルディと2人でここに帰ってくるから」

「レイ、、、ス、、、、」

ガレリアは深呼吸をして涙を払った。

自分たちが幸せであるためにも、ルディとアントワネットを失いたくない。

万が一のその時は、自分も後を追う覚悟で。

「ルディさんのこと、お願い」

「ああ」

「ありがとう、ガレリア。レイス、きっと」

「帰ってくるよ」

約束は出来ないが、今はこの一言でいくらか楽になるだろう。

「指定された時間にはまだ早いな」

呼び出されている時刻は夜中近く。

陽は落ちているが、向かうにはまだ早い。

レイスはソファーを立った。

「一度宿に戻ってもかまわないか。
 向かう前にこっちに寄るから」

「わかったわ」

「でも、アントワネットさん一人じゃ」

「大丈夫よ」

向かう前に、ガレリアと2人だけの時間がほしい。

そのレイスの気持はわかる。

「本当に、ありがとう」

「すみません。それじゃ、少しだけ」

「もう少し待ってくれ」

「ええ」

レイスとガレリアは一度宿に戻った。


宿に戻り、レイスはガレリアを抱いた。

「んっ、、、レイス、、、」

「、、、、、」

睦言を交わしながらの愛撫ではなく、ただ求めた。ガレリアも同じようにレイスを求める。

「、、あ、、ん、、」

一瞬を永遠にしたくて。紅の炎のような情熱で、互いを己に刻み込んだ。


日が落ちる頃に姿を見せたセナが、こう告げた。

「明日で終わらせるよ」

「セナ?」

それは解放なのだろうか。

それとも違う意味での終わりか。

「どういう意味での終わりですか」

セナは答えずにルディに銃を向けた。

ルディは無意識で天井を仰いでいた。

「命乞いでもしてみる?」

「いいえ。恨まれるだけのことをしたのはわかっています」

「潔いね。本当に殺されてもいいの?
 あの人が後を追うかもしれないよ」

「、、、、生きてくれると信じます」

信じるというよりは祈りだろう。

出会った人たちとの繋がりをアントワネットが信じ
その人たちに支えられて生きるよう、ルディは願う。

そんなルディだから、セナは余計苛立つのだ。

「どうして、、、、」

「あなたに、鳥に償う方法がこれしかないのなら」

「、、、じゃあ、殺してよ」

「セナ?」

「僕の望みを叶えるっていうなら、ルディが僕を殺してよ」

「セナ、、、、」

「それとも、こうしようか」

「セナ!」

自身に銃口を向けたセナに、ルディは叫んだ。

救いたいなど、おごりなのかもしれない。

だが、このままにしたくなかった。

悲鳴をあげて泣いているようなセナの心を。

「生きてください。
 鳥ではない生き方を望むなら、何があっても手伝うから」

「憎むだけですむようなひどい男ならよかった。
 そうなれば、この引き金をためらいなく引けたのに」

「セ、、むぐ」

セナはくつわでルディの口を塞いだ。

「もう少し。今夜が最後だから」

「(セナ、、、)」


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