

抱き影
アントワネットからの電信を受け、レイスとガレリアはキエヌに向かっていた。
”急を要する。来訪願いたし”
簡潔で、何があったのかは書かれていなかった。列車を乗り継ぎ、急いで向かう2人の言葉は少ない。
「アントワネットさん、、、、」
「、、、、、」
良くない知らせと、覚悟はしてきた。来訪を促すように、続く空を風が流れていった。
「レイス、、、、」
すぐに向かうとの返信を握り締め、アントワネットはひたすら待った。
何をする気にもなれず、時は止まってしまったかのよう。
「お願い、、、、ルディを助けて」
ルディを誘拐しレイスを呼び出したとなると、かつての鳥に間違いないだろう。
最悪の事態がよぎるたびに振り払う。ただ無事で戻ることだけを願った。
「雨、、、、」
空が泣き出した音が聞こえた。
この季節にしては冷える日が続いていた。人気の無い場所では尚更だ。
「よっ、、、と、、」
両手で何かを抱えてセナが入ってきた。
「それは」
「夜は冷えるでしょう」
セナは持ってきた布でルディを包む。
「ただの布だけど、何もないよりはましだろうから」
ソファーに横になったセナからはアルコールが香った。
「自分の分は」
「2つ抱えてくるのも面倒だったからね」
「、、、、、」
今のセナはやけになっているとしか思えない。
だが、何を言っても苛立たせるだけだろう。やりきれない。
アントワネットを苦しめているこの状況を作り出したのも
振り返ってみれば自分なのだ。
「ルディ、誰かを好きになるってどんな気持ちなの」
「セナ?」
「今のレイスは何をしてるの。
違う場所で、やっぱり鳥かごを続けてるの?」
嘘をついても、つき通せるものではないだろう。
本当のことをルディは告げた。
「レイスは鳥かごを壊しました」
「、、、、、」
「鳥かごの主として、多くの鳥を迎え送りだした。
その中の一羽を、レイスは愛したんです」
「鳥を?」
「鳥としてではなく、人として大切にしたい。共に在りたい。
そう思える相手と出会った。だから鳥かごを壊して
今はその相手と一緒に暮らしています」
「、、、、、」
「勝手な話だと思うでしょうね。
下手な言い訳をするつもりはありません。レイスも、きっと」
「人として、、、、か」
そんな相手と出会えたら、翼を取り戻したいと思うのだろうか。
もし自分が鳥かごを出ようとしたら、ロバートはどうするのだろう。
追いかけるか。違う鳥を探すだけか。だが、どちらにしても。
「、、、、どのみち、そんな気力残ってないや」
「セナ、、、、」
「何も考えずに溺れていたほうが楽だもの。
翼を失った鳥は、餌を運んでくれる誰かを待つしかない」
何も望まず、求めずに。ただ、まどろみに己をゆだねる日々。
それを払うだけの気概も今のセナには無い。
「少し寝てるね。お休み」
「アルコールが入っているのに、風邪をひきますよ。私はいいから、これを使ってください」
「いいよ」
「セナ」
セナは答えずに、瞳を閉じた。