抱き影


「ん、、、、」

冷たい風がかすめた。

「ここ、、、は、、、」

目が覚めたルディはあたりを見回す。

人気のない古い家。

無造作に置かれた家具は埃を被っている。

動こうとしたが逆に引かれた。

「そうだ、、、」

ようやく状況を思い出した。

後ろ手に縛られ、その先はソファーの脚に繋がっていた。

「、、、、復讐か」

自分が何をしてきたかはわかっている。

どれだけ恨みをかっていようが驚きはしない。

だから、心配したのは自分ではなくアントワネット。

男は言った。

”あなたの大切な人のためにも、静かに”

つまり、アントワネットの存在を知っているということだ。

無事であることを、それだけをルディは願った。


わずかに差し込む月光だけが唯一の明かり。時間の感覚は分からなくなっていた。

よほどの郊外なのか、それとも夜中か。何の音もしない。

明かりを持った人影が見えた。

「、、、、誰です」

ゆっくりと近づいた人影はランプを置き、埃を払ってソファーに座る。

「久しぶりだね」

「、、、、、」

「忘れちゃった?僕のことなんか」

ルディは記憶を辿った。かつての鳥たちの。

「、、、、、セナ?」

「覚えてくれたんだ」

セナ。レイスが主になってから自分たちが送り出した鳥。

やはり恨まれてのことか。

「復讐ですか」

「、、、、、」

「セナ、アントワネットには何もしないでください」

「自分よりもあの人のほうが大切なんだ。
 ま、ルディしだいかな」

「セナ、、、、」

「多分、自分よりも彼女が傷つくほうが苦しいでしょう」

「望みは何です。私をどうしようがかまわない。だから」

「でも、ルディに何かあれば同じように苦しむんじゃない?
 そう、あなたが消えれば後を追うくらいはするかな」

「何を」

「これから何をどうするかは決めてないけど、静かにしててね」

この状況を、セナは喜んでいるのだろうか。楽しんでいるのか。

否。迷っているように見えた。

憎い相手を手中に収めているいるというのなら
なぜ笑えないのだろう。

「セナ、迷っているのではないですか」

「、、、、、決めてないだけだ」

「憎い相手を捕えている。けれど、持て余しているのでしょう?
 自分の望みを、気持ちを、ぐっ、、、げほっ、う、、」

みぞおちに、手加減無の拳が入った。

瞬間息が止まり、激しく咳きこむ。

「セ、、、ナ、、」

「ずいぶん、まともなこと言うようになったじゃない。
 まっとうな生き方してましたって顔で」

くすぶっていた苛立ちが、尚更セナを追い詰める。

ぐいと顎を持ち上げ、それをぶつけるかのように
ルディを殴りつけた。

「殺しはしない、、、、けど、、、」

ルディの言うとおりだった。何かをしないと気がおさまらない。

だが、さらってみたところで気が晴れるどころか苛立ちは増すばかり。

セナは向きを変えて部屋を出て行った。


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