何をするわけでもないが、静かに日々は流れる。アリステアの傍らでローゼスは穏やかに過ごしていた。

エルテも、諦めたのか呆れたのか、何も言ってこない。もっとも、あまり顔を合わせることがないが。

けれど、その静寂は前触れもなく破られた。


「今の、、、」

乱暴に扉が閉まる音だった。自分たち以外にはエルテしかいない。2人はエルテの部屋へと向かった。

「、、、どうして、、」

ローゼスが小さく呟く。エルテは肩から背中を切りつけられて座り込んでいた。

「ハンターか」

人間相手にこんな傷を受けるエルテではない。これだけの傷を負わせることの出来る狩人となれば、察しはついた。

「エルテ、起きろ」

「、、アリステア、、」

「あいつか」

「ああ、、ここに狙いをつけたようだな」

アリステアはエルテの傷を拭うと
切り裂かれた服の代わりに自分のローブをかける。

「大丈夫?何か手伝えることあるなら」

「さわるな!」

手をだそうとしたローゼスをエルテはけん制した。

今こられたら抑えがきかない。

「まだ、、人なんだろう、、だったら出て行け」

エルテのきつい眼差しが投げられる。だがその声は弱い。

「ローゼス、、、これが私たちの性だ。見ていろ」

胸元を開けるとエルテを腕に抱く。

「いいのか」

「ああ、、、ん、、くっ、、」

首筋に牙が打たれる。互いを抱く腕に力が入った。

「は、、ぁ、、エ、ル、、」

エルテの喉をアリステアの血が流れていく。艶のある声が切なげにこぼれる。

その光景を、ローゼスは瞳を逸らせることなく見ていた。

「ふぅ、、、」

エルテは牙を抜くと大きく息をついた。

「明日ここを出る。それまでに決めろ」

「、、わかった。ローゼス行くぞ」


「街へ戻れ」

部屋に戻ると、アリステアは迷うことなく言った。

「エルテに傷を負わせたハンターは腕の立つやつだ。
 2、3日もすれば街の人間を引き連れてくる」

「だったら、一緒にいく」

「一度狙いをつけた相手を諦めるやつじゃない。何処まででも追ってくる」

「何処へだって、追われることになったっていい。だから」

「追われるだけの日々は優しいものじゃない。
 それに私たちは姿の変わぬままお前だけが年を重ねる。
 どういうことだか分かるか?」

「、、同族にしてくれ」

「簡単に言うな」

「思いつきなんかじゃない!」

「死にたいのか!」

めったに感情を出さないアリステアが声を荒くする。

「私の母は、、父を愛したがために同じ街の人間に殺された。
 私の目の前でだ」

「アリステア、、、」

ローゼスはタイを解くと、ボタンを外していく。

「よせ!」

その手をアリステアは掴んだ。

ローゼスはアリステアにそっともたれる。

「なら、、お前の手で殺してくれないか」

「何を、、、考えているんだ」

握った拳に力が入った。苛立っているのがわかる。

アリステアの中に生まれる残酷な願い。牙を立て、この手できつく抱きたい。

それがアリステアにとって愛するということだった。

一族を繋ぐために受け継がれる本能。

「アリステアになら、、いい。だから」

首に手を回し、しがみついた。目の前に華奢なうなじがある。

「アリステア、、苦しまないで、、お前といられるなら、、
 人でなくてもいい。全部捨てるから」

「、、ローゼス」

ローゼスを抱き返し、ベットへと運ぶ。身体を重ね、ローゼスを瞳に映した。

肌蹴て露になったなった胸の上を細い指が滑る。

「ん、、」

ピクリとローゼスの体が跳ねた。

「本当に、、いいんだな」

ほんのりと頬を染め、こくりと頷いた。静かに落とされる唇。

アリステアの背に回した腕で、想いを込めて抱きしめた。

部屋に射すのは燃えるような赤い月光。

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