部屋に戻ったアリステアを待っていたのは、廊下でローゼスが出くわした相手、エルテだった。

口元に残った朱色は狩りの後を意味する。

「いくら混血でもそろそろ時期だろう。狩りが必要ないわけじゃない。
 あれはそのための獲物じゃないのか?」

「出て行け」

エルテはアリステアの腕を取った。そして空いた手で胸元を肌蹴る。

こくりと、アリステアの喉がなった。

「お前は人じゃない、そうだろう」

「半分は」

「残りの半分は違う。そしてお前が生きるために必要なのは
 人ではないお前が求めるいることだ」

エルテはアリステアを引き寄せた。

「どうして自分が苦しい生き方を選ぶかね、、、ぐっ、、」

牙が打たれた。アリステアの喉が鳴り、2人の鼓動が同じ音を刻む。

重なり一つになっていく。

「つ、、、ぐ、あ、、こんなに乾くまで耐えることもなかろうに、、、は、、ぁ、」

アリステアにエルテの言葉は届かない。

ただ没頭していた。知らずにエルテを抱く腕に力が入る。

牙が更に食い込んだ。

「う、、、アリステア、、、もう、、それくらい、、こっちが、もたない、、」

カタリと背後で音がした。

その音に我に返ったアリステアが見たのは、大きく目を見開いたまま言葉の出ないローゼスだった。

「エルテ、、、、ローゼスがいることがわかっていて私にこれをさせたのか!」

「喰らうなら喰らう、同族にするなら抱く、戻すなら戻す、いい加減はっきりしろ」

首を伝う赤い筋もそのままにエルテは部屋を出て行く。何かに縛られているかのようにローゼスは動けなかった。

ゆっくりとローゼスに近づき、アリステアは手を伸ばす。カタカタと小さく震える身体に触れた。

「動けるか」

ふるふると首を横に振る。さっきのアルコールなど一気に抜けた。

ローゼスを抱き上げ、ベットへと下ろす。

「今夜はここで眠れ。私が出て行く」

背を向けたアリステアの腕をローゼスが掴んだ。

「本当のこと、教えてくれないか?アリステアと、、その、、」

めったに表情を変えないアリステアが、一瞬悲しげに見えた。

ベットに座るとローゼスを瞳に映す。

「私は、ダンピール。ヴァンパイアと人間の混血だ。さっきの相手はエルテという。
 あいつは純血のヴァンパイアで、、、血をわけてもらっていた」

ローゼスの喉が鳴る。

「どうして、、助けた?私をどうするつもりなんだ」

「、、、ここを出て行け。お前を待つ誰かがいるだろう。
 人は人の住むところへ帰れ」

「誰も、、、待たない。私の心配なんかしない。帰る場所なんかない」

「1人くらいいるだろう」

「いるもんか!」

「、、、、、」

「私がいなくなって、せいせいしてるさ。お前なんかいなければよかった。
 ずっとそう言われてきたんだ。アリステア、ここに置いてくれないか?
 獲物でも何でもいい。どんな扱いでも、私を必要としてくれるならここにいたい」

「自分を安く見るな」

ローゼスはアリステアにしがみつく。泣きながら。

「居場所がほしいんだ。自分がいてもいいと思える場所が。
 今はここがそう思える。だから置いてくれ。何でもするから」

「私たちが人ではなくてもか?同じようには生きられない」

「かまわない」

「、、、、わかった、好きにしろ」

ローゼスは顔をあげると、すがるようにアリステアを見た。

「、、、ほんと、、」

「、、ああ」

「ありがとう」

ローゼスの手が自分の服の胸元に触れる。ここにいるのなら、こうするべきだと思った。

だが、アリステアはその手を止めると、首を横に振る。

「でも、、」

「止めておけ。お休み」

「、、、ありがとう、アリステア」

出て行くアリステアの背中に、そっと呟いていた。


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