夜。シアの誕生日と夢へと近づいたお祝いの夕食を終えて部屋へ戻ったサリュは
もう一つのプレゼントを手に取る。

「アイゼン、いるか」

ほどなく、朝とは違い静かにアイゼンが降りた。

「お仕事、お疲れ様でした。おや、綺麗な石ですね」

サリュの手にあるペンダントに目が留まった。

「、、、あの、、」

「サリュ?」

守護霊に贈り物。よく考えればこうして話していること自体奇妙かもしれない。

考えすぎて上手く言葉に出来ないサリュを、アイゼンは静かに待った。

「、、、これ、アイゼンに」

「、、、私?」

「礼かな。自分でもよくわかんないけど、市場で見つけたんだ。
 アイゼンに似合いそうだなって。、、、これ以上はなし」

「ありがとう」

アイゼンはいつものように瞳を閉じて小さく唱えた。そして瞳を開く。

「俺より背高いもんな。少しかがんでもらっていい?」

軽く膝を折ったアイゼンの首にペンダントをかける。胸元で淡く輝いた。

「やっぱり似合うや」

「あの、、」

「ん?」

「私から触れてもいいですか」

「、、、いいよ。って、アイゼン?!」

せいぜい手をとられるくらいかと思っていたが、アイゼンの腕の中にいた。

あたたかさはあったが鼓動はない。

「、、、ありがとう、、サリュ」

錯覚をおこしそうになる。腕の中にいるのはサリュなのだと、そう言い聞かせるも、、。

「え、、と、、そうだ、もう一つ言いたいことあったんだ」

するりと腕の中からサリュが抜けた。

「俺、工房で刀使えるようになった。親方が彫刻刀持ってきてもいいって」

「おめでとうございます。こつこつ練習していましたものね。
 私からあげられるものがあればいいのですが、、、」

「いいよ、そんなんじゃない。でも、、そうだな」

「何かありますか?」

サリュは手を差し出した。その上にアイゼンの手が重なる。

「これからもよろしくってことで」

「サリュ、、、はい。必ず」

トクン   鼓動など無いはずなのに、アイゼンには聞こえる。サリュのものではなく自分のものとして。

その音が心地よくアイゼンを包んでいく。守りたいと強く願った。

「休んだほうがいいですよ。明日から、大切なお仕事でしょう」

「何だか落ちつかなくてさ。もう少しだけ付き合ってよ」

「ほどどにね」

お茶を入れなおし、ソファーに並ぶ。

「サリュは、どうして今の仕事を始めたのですか」

「いつだったかな、、、通りを歩いてたら骨董屋があったんだ。
 派手に飾りのついたものがほとんどだったけど
 その中に一つだけ飾りのない地味なものが出てたんだよ。
 でも近づいてよく見たら、すごく細かい彫り細工でさ。
 彫るだけで、人の手だけでこんなこと出来るんだって思ったら
 自分でもそれをやりたくなった。
 それで、町の工房を回って弟子入りさせてくって頼んだんだ。
 散々断られたけど、どうしても諦められなくて。
 やっと今の親方が認めてくれた。
 いつか、あれと同じものを、あれ以上のものを作りたい。
 それが今の俺の夢。叶うかはわからないけど」

宝物を見つけたように楽しそうに話すサリュに、アイゼンは微笑む。

そして、『いつかアイゼンのお嫁さんになる』と笑っていたイザベルと重なった。

「アイゼンは生きてた頃何してたんだ」

「それは、、、」

アイゼンの表情が曇った。

「すみません。自分のことはあまり話せないので」

「そっか、、、ん〜」

「サリュ、もう終わりにしましょう。また明日」

「そうするかな、、あふ」

「お休みなさい」

アイゼンの姿が消えた。

「、、、いつもこうだっけ?」

首をかしげた。いつもなら、そう、サリュの返事を待ってから帰る。

もっとも、姿が見えないときに何をしているのかを知っているわけではない。

それなりに事情はあるのだろう。

「お休み」

いつものように返事をしてベットへともぐりこんだ。


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