

サリュの仕事先はアンティーク家具の工房。美しく細工の施されたここの品は評判のいいものだった。
サリュはまだ組み立ての手伝いだが、いつかここの飾り職人として認められるのが夢。
遅れていた分を取り戻し、目処がついたのは昼の少し手前。
思っていたより早く片付いたこともあり、サリュは市場へと足を向けた。
「貰うほうのくせしてうるさいからな」
シアの誕生日ということもあり、色鮮やかな宝飾品を眺める。だが綺麗よりは可愛いほうが似合う気がした。
「シアちゃんへのプレゼントかい」
知った相手でもある店の主人が声をかけてくる。
「うん。でも、このへんだと高級すぎるかな。もう少し簡単につけられるのない?」
「そうだな、、これでどうだい」
店主が差し出したものは星をかたどったペンダント。
小ぶりのものでシアにはこれくらいだろうと思った。
「シアには丁度いいかも。これで頼むよ」
「まいど。包むから待ってな」
店主がそれを包む間、サリュは再び店先に眼を向ける。
その中の一つに眼が留まった。
(アイゼンに似合いそう)
透かしが入った十字のペンダント。
チェーンの間にはアイゼンの瞳の色をした石。
「これは」
サリュの呼びかけに店主が振り返る。
「そいつは滅多に入らない石だ。その大きさでも値は張るぞ」
「どれくらい」
「こんなもんだな」
出してきた金額は、確かに他の品よりも高い。
だが買えない金額ではなかった。
「(いいか。礼代わり)これも」
おや、と、意外そうにサリュを見る。
しかしそのへんは心得ているもので、綺麗に包むと理由は訊かずにサリュへと渡した。
「シアちゃんによろしくな」
「ありがと」
受け取った2つをしまい、家路を急いだ。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「、、、何笑ってるんだ」
出迎えたシアはにこにこと笑っている。
「いい知らせよ。工房から連絡があって、明日から彫刻刀持ってこいって」
「、、、それ」
「おめでとう。夢に近づいたわね」
工房で刀を使うことが許された。それは細工を始める許可が下りたということでもある。
勿論製品に携わるのはまだ先だが
工房で刀を使えるだけでも、サリュにとっては大きな前進だった。
「頑張ってね。兄さんの飾り細工、早く見たいから。美味しい物たくさん作るわ」
「ありがと、、、ほんとに使えるんだ。なあ、夢じゃないよな。
夢の中の話じゃないよな」
「大丈夫」
いつになく興奮した面持ちのサリュに、シアが優しく笑う。
ここでサリュは先ほどの買い物を思い出した。
「シア、渡すものあったんだ」
「あたしに?」
「これなんだけど」
慎重に包みを取り出す。
「誕生日プレゼント」
「、、、今日は一番嬉しい夕飯かもね」
サリュからのプレゼントを両手で大切に包んだ。
「何食べたい?」
「任せるけど、食べきれる量にしろよ」
何かのお祝いにと作った夕飯の残りを3日がかりで終わらせた時のことが浮かぶ。
「わかってるわよ。買出し行ってくるね」
満面の笑みのまま、シアは市場へと出かけていった。