

翌朝。
「う〜」
大きく背を伸ばしてサリュはベットから出る。そして着替えに手を伸ばすがはたと考えが浮かんだ。
「俺から姿が見えなくてもいる可能性はあるんだよな。てことは、、」
部屋を見渡す。確かに姿は見えないのだが、、。
「いるのか?」
反応はない。
「いないと思っていいんだな」
更に念を押し着替えに手を伸ばしたところで、がたっ、ばきっと音がした。ほどなくアイゼンの姿が浮かぶ。
「す、すみません。遅くなりました」
慌てふためきサリュの前に降りた。
「ご用向きは」
「そのまま後ろ向いてくれ」
「は?」
「いいから、回れ右」
「え、あ、はい」
くるりと背を向けたアイゼンを見ながら着替えをすませる。
「いいよ」
その声に、アイゼンはサリュに向き直った。サリュは朝のお茶で一息入れる。
「アイゼンはこの家の先祖なのか?守護霊ってたいていそうだよな」
「、、、縁のあることは確かです」
「中途半端な言い方」
「私はあなたの守護を請け負ったことを嬉しく思う。それだけですよ」
「俺の?」
アイゼンはサリュの前で膝を折った。
「どうか、この役目を全うさせてください」
「、、、別に、嫌とかそんなんじゃないけどさ」
真っ直ぐ見つめてくる瞳に自分が写る。だが自分ではない気もした。
上手く説明出来ない、はっきりしないもどかしさ。
「触ること出来るのか?」
「少し待ってくださいね。感覚を戻すには構えが必要なので」
アイゼンは瞳を閉じた。小さく何かを唱え、ゆっくりと瞳を開く。
「どうぞ」
サリュは自分の手を重ねる。確かにそれは、人に触れている感触だった。
「なんだか、、懐かしいっているか、安心するんだ。やっぱり先祖だからなのかな」
「そう思ってくれるのなら、私にとって何よりの喜びです。今日はこれからどちらに」
「仕事」
「休日でもですか?」
「ここ何日か母さんが寝込んでたんだ。
無理言って休ませてもらってるから、少し穴埋めしとかないと」
「事情があるのですから、仕方ないでしょう?」
「でも、俺見習いだしさ。それに早く腕を上げて独立したい。叶えたい夢があるから」
「サリュなら叶いますよ。きっと」
「ありがとう。アイゼンはいつまでいるんだ?俺が死ぬまでいるの?」
「それは、わかりません」
ふと、アイゼンの表情が沈む。
「可能な限りいたいとは思いますが、守護が離れる理由もいろいろありますので。
時間大丈夫ですか」
「え、いけない。じゃあ、また後で」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
鞄と上着を持って駆け出してたサリュを、手を振りながら見送った。
「いつまで、、か」
サリュが命を終えるまでいられるのならな、その最後を見届けたい。
そして、その魂をこの手で迎えたいと願う。
「、、、イザベラ」
サリュはかつて愛した女性の転生の姿。イザベラの魂を引き継ぐもの。
無論、今のイザベラはサリュなのだし、サリュの生き方にまで干渉するつもりはない。
サリュをサリュとして守る。ただそれだけなのだから。
だが、、そう思い込もうとしているだけなのだろうか。どこかにイザベラの影を見ているのか。
ふと眼を向けた先に写真があった。サリュとシアが笑っている。
「サリュ、、ですね、あなたは」
自分に言い聞かせるように呟いた。