

導きの丘(U)
「どうしたのかしら、、、レイス?」
レイスが目の前にきていた。
「あいつのこと、ありがとう」
「レイス、、、」
「お前も疲れてるだろう。だけど、あいつの前では笑ってくれているんだろうな」
「あ、、、」
「ガレリアがルディを連れ出したのは、きっと弱音を言わせたいからだよ。
辛いとか、疲れたとか。あいつの前では言えない事を、ここで吐き出していけばいい」
「どうして、、、ごめんなさい」
頬を涙が伝う。どこかで我慢をしていたのだろうか。
そして気がつく。不安を抱えているのは自分も同じなのだと。
「いつまで持つのか、、、正直怖くなるときがあるの。咳き込むのもひどくなって、、、
夕べから今朝なんてほとんど寝てない。苦しいはずなのにルディは謝ってばかり」
レイスは黙って聞いていた。
「もっと我侭になってほしいのに。
わかってるつもり、ルディもあたしに気を使ってるってことは。
だから、、よけい」
「それでも、あいつはお前を必要としているよ」
「レイス、、、」
「少なくとも、あいつが生きようとしているのはお前がいてくれるからだ。
だからいてほしい。苦しくなったら、またここで吐き出していけばいい」
「、、、ガレリアがいてくれてよかった」
お互いに大切な誰かが隣にいるからかもしれない。
男と女ではなく、解り合える相手として向き合える。
「いい戦友。そう言ったろう。お互い様だよ」
レイスはアントワネットをそっと抱きとめる。
「、、、ありがとう。少しこのままでいさせて」
約束の木。風に吹かれて眼下の町を眺める。
「ここはいい風が吹きますね。ガレリア?」
遠くの一点を見つめるガレリアは、見たことのない険しいともとれる顔をしていた。
向かってくる何かを受け止める覚悟のように。
「何でも話せる、言い合えるっていうのは理想だけど、大切だからいえないこともある。
そんな言葉が出そうになるとここに来るんだ。そして風に乗せてしまうの。
その言葉を思い浮かべて風に吹かれていると、いつの間にか風が何処かへ運び去ってくれる」
「、、、、、」
「アントワネットさんにとってはレイスがそんな相手なんだと思う。
好きとか嫌いとかじゃなく、ルディさんとは違う意味で大切な人。
ルディさんのこと大切にしたいから言えないことを今頃レイスに言ってるんじゃないかな」
「、、、それを言わせたくて私を連れ出したんですか」
「溜め込んだままじゃ、アントワネットさんが壊れる」
「、、、、、」
いつから考えていたのだろう。レイスのことしか見えていないと思っていた。
それだけ真っ直ぐにひたむきだったから。
「でも、ルディさんも同じことだもんね。だから来てもらったの。
アントワネットさんに言えないことでも、この風は聞いてくれるよ」
「ガレリア、、あなた」
風が凪いだ。ガレリアの背からさす陽光が純白の翼に見える。
導きの天使。その天使は何を思ってこの場所に来るのだろう。
「あなたは何をここに置いて行くんですか」
「レイスとのこと。一緒にいることを本当に望んでいるのか
それを僕自身に訊いてる」
「まさか、、あなたが迷うんですか?レイスとのことを?」
ありえないと思っていた。ガレリアが迷うなど。唯一絶対の存在。
何があっても2人の間と揺らぐことはないと、そう信じて疑わなかったのに。
「その答えは」
「レイスに何かあったら僕も消える。答えはいつも同じ」
微笑みながらの答えに迷いはない。ガレリアはルディを優しく腕に収める。
「大丈夫だよ、ルディさん。
アントワネットさんといることは、絶対相手を不幸にはしないから。
だから怖くなんかないよ」
「ガレリア、、、」
天使は先に進むことに迷う魂に灯りを与える。その翼で優しく包み込んでゆく。
道しるべを与え、その先を指し示すように。