幸福の護り石(U)

「お疲れ様でした。助かりましたよ」

「役に立ったなら嬉しいです。そうだ、これ」

ガレリアは持ってきたものを差し出した。

「今日はこれを持ってきたんです。お祝いに」

「ありがとう。、、、アントワネット?」

「え、、あ、ごめんなさい」

「アントワネットさん、どうしたの?」

ひとまずの片づけを終えてから、アントワネットの様子がおかしい。

会話はどこか上の空で、そうかと思えば黙り込んでしまう。

「私たちがいて話しにくいことならここまでにするが、何を見つけたんだ」

レイスの言葉に、ピクリとアントワネットが動いた。

「何か気になることがあるのなら言ってください。
 私に無理なら、レイスかガレリアでもいいですから」

「、、、、、」

言ってしまっていいのだろうか。片付けている最中に見つけた、ある物。

つまらないことだと、自分でも思う。けれど、離れなかった。

「嫌な女かもしれないけど、それでもいい?」

「、、、構いません」

アントワネットは席を立つと、暫くして手紙を持って戻った。

「これ、ルディの荷物の中から出てきたの」

色の変わった古いもので、宛名は「大切な貴女へ」

「別に昔をどうこういうつもりはないのよ。それは信じて。ただ、、どんな人だったのかなって、少し考えてただけ」

その手紙をルディは懐かしそうに見つめた。

「昔、大人になったら迎えに行くと、そう決めていた少女がいたんです。何処の誰なのか、名前も知らなくて。
 私も彼女も何故か名乗らなかった。けれど、当たり前のように同じ場所で会っていました」

その光景をルディは思い浮かべた。

「続くものだと、信じて疑わなかったけれど、いつしか彼女は来なくなった。
 そんなときにこの手紙を書いたんです。送り先もわからなかったけれど、捨てる気になれなくて」

「、、、ルディさん、今でもその人のこと」

「好きですよ」

そう返され、ガレリアは言葉にならない。

本当ならば、なおさらアントワネットの前で言う必要があるのだろうか。

「でも、今はアントワネットさんでしょう?」

「ガレリア、いいわよ」

「だけど」

「その相手が誰であれ、あたしだってルディのこといえないもの」

「言ってたな。その手紙はまた会うための願掛けみたいなものだって」

レイスは微笑んでいた。

「レイスも知ってるの?その人のこと」

「ああ、知ってる」

「私にとっての光です。太陽のように暖かくて、月のように優しくて」

ルディはすっと息を吸い込むと、その手紙を破り捨てた。

「、、、どうして?あたしのことは」

「待っていてください」

今度はルディが席を立った。そして小さな箱を持って戻る。

「その少女に貰ったものです」

中にあったのは、紫色に輝く石。

「、、、これ、、」

「幸福の護り石。きっといいことがあるからと、私にくれたでしょう。
 覚えていますか?アントワネット」

「、、、、あの時の、、、ルディなの?」

優しく、ルディはアントワネットを見る。

何処の誰なのか、名乗ることもしなかった。

けれど、同じ場所で当たり前のように会っていた。

とある事情でこの町を離れることになったとき、この石を渡したのだ。

お守り代わりに持っていたこれを。

「レイスに付き合って初めて貴女の店に来たとき、面影はあったけれど確信はありませんでした。
 でも、これと同じ石が飾ってあるのを見つけて、きっと貴女だと」

「ルディ、、、」

「昔、お互い知らずに会ってたんだよ。私は私、ルディはルディで。
 だけど、口には出さなかったから気づかなかった。
 アントワネットが町に戻って暫くして、ルディから昔名前も知らない少女と会ってたって聞いて
 同じ相手じゃないかって思い始めた。連れてきてみたら、大当たりだったってわけだ」

「今の貴女を大切にしたいから、あえて言いませんでした。
 この石、返しますね。願掛けも叶ったことですし」

「ルディ、、、」

「少し早いですけど、始めましょうか。アントワネット、料理のほう頼めますか」

「わかったわ、すぐ」

「2人とも、少し待ってくださいね」

そしてレイスとガレリアが残る。

「知ってたんなら教えてあげればよかったのに」

「ルディが言わないつもりなら、私から言うことじゃないだろう」

ガレリアは目の前に残された贈り物に目を向けた。

2人にとって、あの石に勝るものはきっとないのだろう。

「これ、、いらなかったかな。幸福の護り石か」



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