


幸福の護り石(T)
「そんなに心配しなくても、誰も取ったりしないよ」
「、、、うん」
けれどその返事は上の空。手にした荷物をしっかり抱え込んだガレリアに、レイスは微笑んでいた。
2人がやってきたのはアントワネットの店の前。
「あ、、、レイス、これ」
掛けられた札を見て、ガレリアは嬉しそうに笑った。
そこに刻まれた店の名前は {アントワネット シェルダンの店}
「喜んでくれるかな」
「2人のことになると、ほんと嬉しそうだな」
「だって幸せになってなってほしいもの」
にこにこと笑みを浮かべるガレリアに多少面白くない気持ちがわく。
「僕がレイスといられるのも2人のおかげだし、その分ルディさんたちにもね」
その言葉に先の気持ちが吹き飛んだ。
「ガレリア」
「ん?んっ、、」
何の前触れもなく重なった唇。揺れて落ちそうになる荷物を何とか支える。
「、、、何やってるんですか、人の家の前で」
いつの間にか背後に立っていたルディの、呆れた声が届く。
「あ、、、こんにちは」
「お前もここに用か」
「今日は朝からここですよ。荷物を運び入れている途中です」
「まだ一緒に住んでなかったの?」
「まあ、、そうとしか答えられませんけど」
「どうして?好きな人と一緒にいるのって悪いことじゃないでしょう」
「、、、ほんとに、あなたって人は、、、」
どこまで正直になれるのだろう。自分の想いに。
透明な硝子のようだと、ルディは思う。
「、、、僕が言ってること、変かな?」
「そうじゃありませんよ。ただ、、不思議な人だと。
強くて、その一方で脆くもある。硝子のようですね」
「僕が硝子、、」
「深くは考えないでください。ただの例えです。どうぞ」
先にたって中へと入る。ガレリアはレイスを見た。
「悪い意味じゃないさ。行くぞ」
トン、と背中を叩き2人も扉をくぐった。
「いらっしゃい。ごめんなさいね、散らかってて」
「、、、、、いえ」
「悪いときに来たな」
引越しの真っ最中。箱や積まれた荷物の間から、アントワネットが姿を見せる。
「ルディさんの荷物をこっちに運んでるんでいるんですか」
「ええ。事務所はそのまま向こうなので
必要最低限のものだけのはずなんですけどね」
どう見てもそれ以上に見える荷物を2人は眺めた。
「えっと、、座ってもらうっていっても、いつもの部屋も荷物置場だし」
考えてみるが、家中が荷物置場となっていた。
「ルディ、いつもの部屋だけ先に片付けてしまいましょう」
「そうしますか。ああ、やりますよ。少し休んでください」
「手伝います。4人のほうが早いし」
4人目が誰なのか、わからないはずがない。
ルディとアントワネットは揃ってレイスを見た。
「間違ってる?」
そうガレリアに無邪気に問われれば、断ることなど無理。
「いいや、片付けてしまおう。ルディ、今夜はおごれよ」
「手持ちの一番いい酒をだしますよ」
くすくと笑いながら返す。そして4人は山積みの荷物と向かい合った。
「ガレリアにはかないませんね。一緒になって、少しは行動的になりました?」
「肉体労働が向いていると思うか」
「一番似合いません」
「ありがとう、ガレリア。助かるわ」
「お礼代わりです。ルディさんとアントワネットさんにはいくら感謝しても足りないもの。
これは何処に置けばいいですか」
「えっと、、あの角の棚にお願い」
そして陽が傾くころ、ようやく住めるまでになったところで4人はテーブルを囲んだ。