回顧録
戒流、麗羅、珠莉、遥斗、柚葉の昔話です。
テキストのみで写真はありません。
ベットへと運びシャツを破る。大量のお湯と一番強い酒を運び、布を裂くと切れるナイフを火であぶった。
「戒流、聞こえてるか」
「、、、は、、る、、」
「出来るだけ早く済ませるから、耐えろよ」
「、、ああ、、」
「珠莉、しっかり押さえとけ」
「わかった」
流れ出す血を拭い、アルコールを吹きかける。そして刃を入れた。
「くっ、、、」
「我慢しなくていい。声出せ」
「兄貴、見つかりそう?」
刃先に硬いものがあたった。
「(これか、、瞬間えぐらなきゃ無理だな)一瞬だけだ。いくぞ」
「!!!!!!!」
声にならない悲鳴が上がり、気を失った戒流はベットへと沈む。
「親分?親分!」
「少し寝かしとこう。取れたよ」
「ありがとう、兄貴」
ベットを整えなおし、手当てを終える頃には夜が明け始めていた。唇を噛んで、珠莉は眠る戒流を見つめる。
「珠莉、船の連中に絶対仕返しはするなって言っとけ」
「このまま黙ってるなんて嫌だ!向こうの逆恨みじゃないか!」
「わかってる。だけど、仕返しの仕返しなんてやってたらいつまでも終わらない。戒流だって同じことを言うよ」
「、、、、、」
戒流ならそうだろうと思う。自分のことより仲間のためを思うから、あれだけの人数の頭をやっていることも十分わかっていた。
「麗羅たちに知らせてこないとな。お前も少し休め」
「船にいるから、目が覚めたら教えてくださいね」
「わかった」
「2人に知らせてきます」
珠莉が部屋を出て間もなく、麗羅と柚葉が入る。
「兄さんは」
「命にはかかわらないよ。まだ寝てるから」
「兄さんと2人にしてもらってもいい?」
遥斗と柚葉は顔を見合わせる。
「暫くしたらまた来るわ。それでもいい?」
「はい。ありがとう柚葉さん」
パタリと扉が閉まる音がした。
「兄さん、、、」
「、、、う、、、ん、、」
「、、、傍にいて、、1人にしないで、、、」
失うかもしれない。それが現実になろうとしたとき、すさまじいまでの不安と恐怖が襲ってきた。
船を下りて欲しいとは言えないけれど、つい口をついて出る言葉。
「、、麗羅、、」
ふわりと手が重なった。
「起きてるの、、?」
「、、、せっかくの誕生日、こんなことになって、、悪かった」
「僕のことはいい。、、、、次の航海、残ってくれるよね」
「動けるようなら出るよ」
「そんな、、無茶だよ!」
「皆には、、迷惑かけるけど、、」
「駄目!お願いだから止めて!」
麗羅の叫ぶ声が届いたのか遥斗と柚葉が部屋に戻った。
「麗羅、どうした」
「遥斗、遥斗も止めて。兄さん、次の航海予定どうり出るって」
一瞬考えたが、遥斗は確信を持って言った。
「大丈夫、心配しなくていい」
「遥斗、何で」
「いくら戒流が乗りたくても、珠莉や他の仲間が乗せるわけないだろう」
「そうよ。戒流、自分が受けた荷物に責任持ちたいだけでしょうけど、もう少し信用してもいいんじゃない?
あなたが乗ったら、荷物とあなたの両方を心配しなきゃいけない。そのほうが危険だと思うけど」
「珠莉たちの前で言ってみろ。縛ってでもお前を残すさ」
「、、、、わかったよ」
「兄さん、、、」
太陽が朝の光を投げかける。
「朝か、、私たちも休むとしよう」
大きく背伸びをした遥斗が麗羅の背中を叩く。
「いろいろ悪かったな。珠莉にも」
「伝えとく」
長かった夜がようやく明けた。
それから3日後。
「それじゃ親分、行ってきます」
「悪いな」
「大丈夫ですよ。親分はゆっくり休んで、早く治してくださいね」
遥斗の言ったとうり、珠莉たちから締め出しをくらった戒流は残ることになった。
荷を積み終えると、船は勢いよく汽笛を鳴らし海へと出る。その姿を戒流はじっと見つめていた。
「戒流、そろそろ、よけろ!」
遥斗の叫び声に頭上を見る。崩れてきた荷をよけようとするが、やっと動けるようになった体はとっさには反応出来なかった。
間に合わないと、そう思ったとき誰かに突き飛ばされた。そこには
「柚葉?柚葉しっかりしろ!」
今自分がいた場所には、崩れた荷に足を挟まれている柚葉がいた。人がわっと集まる。
遥斗は麗羅を引っ張り出すと、片隅へと連れ出した。
「麗羅、ここを動くなよ」
「遥斗、何があったの?兄さんは、、柚葉さんは?」
「説明は後でする。すぐ戻るから、いいな」
「、、、うん」
遥斗も人の中へと戻っていった。聞こえてくる言葉を必死で聞き取ろうとするが、幾重にも重なった声では不可能だった。
僅かな時間が永遠に思えてきたとき、ようやく遥斗が戻った。
「麗羅」
「教えて、何が」
「戒流の近くの荷が崩れてきたんだ。戒流は無事だけど、庇った柚葉が足を挟まれて」
「、、、足?そんな、大丈夫なの?踊れるの?」
「まだわからない」
「、、、、、」
「戒流が一緒に行ってる。店に戻ろう」
麗羅の手を取り、無言のまま店へと戻る。慣れた道が、やたら遠く感じられた。