白銀の名のもとに


「これは、、、、」

「これが、あの戦場?」

門をくぐり見た風景は一面に咲くフィエラの花だった。

イーリス、ジャステアからは驚きの声が上がる。李凰はフィエラの花を優しく見た。

「昔、私の軍の薬師に沙夜という者がいてね。沙夜はどこの戦場にも花を植えていった。
 散った者への弔い。戦が終わり、種が花を咲かせることを願って。
 花の咲く風景を楽しめる時がいつかくることを信じて」

「争いなど、本心からは誰も望んでいなかった。きっと。なのに何故、、、、その時は気がつかないのでしょう」

花と同じ、淡いピンクの瞳が揺れる。

「何故争ったのか、争わなければならなかったのか。
 その問いに答えられる者はいないよ、おそらくね。、、、来たな」

李凰の言葉のとおり、揺らぐ想いが集まり始めた。

「イーリス、、、、白の将、、、、」

「きてくださったのですね、、、」

「皆、、、ずっとここで揺らいでいたのですね」

「争いは何故、、、、」

「何故、、、停戦を、、、」

「敗北も勝利もない、、、」

「何故、、、」

その思いは、あの塔から出た時イーリス自身も問いかけた。

あの時代を生きた者なら皆考えるだろう。

「復讐を、、、、」

「何も知らずに、、、、」

「あの頃の犠牲を知らずに生きている者に、、、」

「いいえ、出来ません」

イーリスは、はっきりと告げた。

「何故、、、です」

「あの頃を知っているから。復讐など憎しみと悲しみしか残さない。あの頃を知らずに生きている同胞に罪はない。そうでしょう。
 確かに悔しい。けれど恨む相手も、もういないんですよ。同胞を失い、同じように失わせてきた。これ以上は、、、、く」

「イーリス殿!?」

絡んだものをジャステアが散らす。

「我らを、、、見捨てる」

「違う。あなたたちを恨みと憎しみの塊にはしたくないんです」

「それに、戦の後に目覚めても戦の頃の対立が原因で傷ついた者はいる。光を失った者。片翼をもがれた者。また同じこと繰り返すのか」

黒に目覚めた白。白に目覚めた黒。そのせいで傷ついた者を知る李凰の叫びだった。

だが、、、、すでに届かない。

「黒の将、、、、我らの敵、、、」

構えた李凰の前で、散らせたのはイーリス。

「お願いです。これ以上憎まないで」

「イーリスさま、、、、我らを消すと、、、、」

想いはどす黒く変化していく。

「、、、、もう無理か」

ジャステアは悲しげに呟いた。

憎む相手が誰なのか、いつから憎んでいるのか嘆いているのか。

それすらも忘れていくだろう。

そして純粋な憎しみしか残さずに、永遠に縛られる。それが成れの果て。

イーリスは構えた。

「あなたたちを憎しみの塊にするくらいなら、私が散らせます」

「イーリス、、、、」

「その為に来たのだから」

「イー、、リス、、、グ、ゥア、、、」

「、、、ワレラノ、、テキ、、、」

「ユルサヌ、、、、」

「カエサヌ!」

「全て相手にしなくてもいい。勢いの強いのだけ散らせるぞ」

李凰は足元の花を思った。

「沙夜、、、お前の願いは届かなかったか。花も散らせる。許せ」

それぞれの想いを懸けて、死闘が始まった。


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