白銀の名のもとに


「やはり、、欲しいな」

騒ぎ出した{嘆きの渓谷}を叩く為、ルトヴァーユは人選を急いでいた。

その中で真っ先に浮かんだのはイーリス・闇戯・ジャステアの3人だった。

戦の時代を生きた軍の将。門を抑えた時に覚えた感覚。上手く言葉に出来ないが、いてくれれば心強い。

まずはイーリスの承諾からと、離れへ足を向けた。


「お帰りなさいませ」

離れの門番から声がかかる。

「イーリスは」

「お客様がみえて、まだお戻りではありません」

「客人?名前は聞いていますか」

「お一人で、ジャステア様です」

「そう、、、わかりました」

いないのならばと、本城へ引き返すことにした。

(場所を変えなければいけない話なのだろうか。だとしたら何だろう。
 まあ、、、、昔の話なら私が立ち入ることではないけれど。出たついでだ。様子を見ておくか)

押さえを確認しておこうと方向を変えた。


ん、、、あれは」

{嘆きの渓谷}には先客がいた。

その相手が闇戯だとわかり、ルトヴァーユは目の前に下りた。

「ちょうどよかった。あなたに話があってイーリスに連絡を頼もうと思っていたんです」

「ここに来てほしくなかったのですが」

つい先ほイーリスたちを送り出したばかり。時間稼ぎには、最悪一戦を必要としそうだ。

「約束は約束だから、仕方ありませんね」

「何のことです」

「出来れば、何も聞かずにお引取り願えませんか」

言った闇戯だが、これで引き返すとは思っていない。

見込みどうりルトヴァーユは動かなかった。

「何も聞かずにというのは無理な相談です。
 聞いても引き返す約束はできないが」

「引き返すことがイーリスの望みだとしてもですか」

ルトヴァーユに一つの考えが過ぎる。逆に問いかけた。

「イーリスは何処です」

闇戯はそんなルトヴァーユに満足した。

「あの後わかったことですが、この{嘆きの渓谷}は戦場跡なんです。
 そしてイーリスのかつての同胞が揺らぐ場所だった」

「まさか」

「自分の手で終わらせてやりたいと、そう言いました。
 さすがに一人で送り込むのは危険すぎるので
 ジャステアを行かせてあります。
 ほんの一瞬押さえを緩めてどうにか入りましたよ。
 あの時はこうなるとは思わなかったけれど
 3人で押さえたのがいい方に作用したかな」

「無茶なことを」

追おうとしたルトヴァーユの前に闇戯が入った。

「頼まれているんです。あなたを通してくれるなと」

「、、、、、」

「イーリスはあなたの介入を望んでいない」

どこまでも淡々と冷静に。

ルトヴァーユから見れば、この状況をゲームのように思っているかのようだった。

「私はあなたの知っている軍将としてのイーリスを知らない。任せられると、そう思っているんですか?」

「それはわかりません」

この言葉すらあっさりと返る。

「イーリスもジャステアも戦闘能力は申し分なかった。けれど、今相手にしているものは未知数です」

「だったら、、、どうしてそんなに落ち着き払っていられるんです」

ルトヴァーユは腹が立ってきた。

「イーリスはあなたを友人だと言った。あなたにとっては何です」

「友人ですよ。だからイーリスが私に託したことを遂行している。
 一人で送りたくはないからジャステアを同行させた。これが私のやり方だ」

言い切る闇戯に迷いはなかった。

「どうしても通るというのなら、こちらも力ずくで止めます」

「、、、、あなたを強いと思った。そして今も。
 それは迷わずにやるべきことを決めているからか。
 心が決まっているから」

「そう思うのなら決めてください。引き返すのか、進むのか」

ルトヴァーユは翼を翻した。

この場合、それは剣を交えても構わないという意味だ。

「黙ってイーリスを待つより、こちらを選びます」

「わかりました」

闇戯もならった。

それとなく様子を伺っていた数人が驚いて集まる。

「何事ですか」

「{嘆きの渓谷}に押さえに入った者がいるのですよ。
 私の方には何も言わずに。
 どうやら、ただでは通してもらえないようなのでね」

「統括様を無視してそのような、、、まして剣を向けるなど」

一人が闇戯を見据えるが余裕で返される。

「他は手を出さないでください。私と彼の真剣勝負だから」

「しかし」

「私がやらなければいけないことなんですよ」

ルトヴァーユにも迷いはない。

その気迫に押され、周囲が一歩下がる。

「では、手合わせ願いましょう」


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