月詠


2人は月詠の前に出された。

冬牙、樹荊それぞれが青藍の隣に立ち、重臣が並ぶ。

樹荊は東雲たちの背後に回った。

「何か言いたいことある?」

「あなたが月詠であることを、今の私は嬉しく思えます」

この声は届いているのだろうか。

思いの欠片でも伝えたい。そう願う。

そして硝輝は

「最後に旨い水がほしい」

「、、、、月詠様、よろしいですか」

青藍は樹荊に向かって頷いた。

「じゃあ、硝輝から」

これで終わりだと、硝輝は目を閉じた。

不思議と苦痛も何もなかった。

何も見えない中で、一撃で終わらせてくれたのかと
そう、思っていたら

「いつまで固まってるの。目、開けたら」

「何、、、、?」

樹荊が仕留めたのは、硝輝の荒縄だった。

「硝輝を助けていただけるのですね」

だが、隣の東雲には鋭利な剣先が向いている。

「今まで世話になったな。ありがとう」

「な、、、待ってくれ。東雲だけ殺すつもりなのか」

「硝輝、離れてな」

「私の分まで生きてくれ。それでいい」

硝輝は庇うようにしがみついた。

「お前だけ死なせるか!つっ、、が、、、」

思わず叫んでしまった硝輝は、喉を押さえた。

「早いとこ終わらせて説明は後だ。冬牙」

「ああ」

冬牙は硝輝を引き離し押さえ込んだ。

「やめろ、、、、やめてくれ!」

樹荊は剣を振り下ろす。

その剣は同じように東雲の枷を解いた。

己の手を見つめる東雲に、青藍は微笑んだ。

「これからどうするかは、あなたたちの自由です」

冬牙、樹荊も傍らに戻る。

「また月詠様の命を狙うならそれでいい。
 何度来ようが、何度だって迎え撃つ。それだけさ」

「他の連中にもそう伝えておけ」

居並ぶ全員が頷いた。

青藍を中心に、宮の結束はより強固なものになっていた。

月詠として生きると、青藍の心が定まった結果なのだろう。

東雲は山中での姿を思い出す。

青藍が月詠ならば国を預けられる。そう思えた。

硝輝もまた、この宮を落とすのは容易ではないと悟った。

「私たちの負けか」

「月詠様、この国をどうかお願い致します」

「解放は明日。もう一日宮に留まってもらいます。樹荊」

「連れてきて」

東雲と硝輝を挟む形で兵がつき、先に歩き出した樹荊に続いた。

青藍は、2人の背中を優しく見送った。


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