


月詠
硝輝がいる牢の出口は崩れた瓦礫で塞がれてしまっていた。
土埃は行き場を失い、もうもうと立ち込めている。
このまま生き埋めを覚悟した時だった。カラリと、音がした。
「、、、、、」
カラカラと小さな破片が転がり、そして壁が崩れた。
「生きていたか。運のいいやつだ」
「生き埋めのままほっとけばいいだろう」
「口の減らない」
兵は硝輝を牢から出した。
「処刑か」
答えは返らず、先へ進む。
行き着いたのは、破損の少ない別の牢。そこには
「東雲、、、」
「入ってろ」
突き飛ばすように中に入れ
鍵を下ろすとさっさと戻っていった。
「せっかく盾になってくれたのに悪かったな」
「月詠は」
「取り返された」
「、、、、一気に疲れるな」
並んで壁にもたれる。
「硝輝、訊きたいことがある」
「ん?」
「桂が落人の村っていうのは本当なのか?」
「、、、、それを知ったのか。本当だ」
月詠は宮に戻り、東雲が全てを知った。
これで終わりだと、硝輝の中で告げる声がした。
「結局、私たちもお前を巻き込んだだけだな。すまない」
「いや」
「怒ってないのか」
「失敗した時は、捨て置くはずじゃなかったか?」
「それは、、、、」
やはり青藍の言ったとおり
反対を振り切って乗り込んできたのだろう。
「反対押し切って、一人で乗り込んでくるような
無鉄砲だとは思わなかったよ」
「他に言い方ないのか」
「ありがとう」
「東雲、、、、、」
「不思議だな。死ぬ前って、こんなに穏やかなものか」
「やっぱりそうなるか」
「ま、お前はわからないが、私は無理だろう。
暗殺未遂に牢破りだ」
「なら、私は本当の反徒だよ。同じだろう」
不思議なほど、2人の心は穏やかだった。
失うものは残っていない。だからだろうか。
「冥土の土産話でも考えるか」
「そうだな。羽百合の花、月詠に見せてやりたかった」
「東雲、、、、」
純白の小さな花。あの光景を青藍に見せてやりたかった。
東雲の胸中には、そんな思いが浮かんでいた。
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「忘れられるのか、私たちは」 「、、、、、」 「東雲?」 「喉が、、、、」 あの震災以降、誰も牢にこなかった。 「ずいぶんな処刑だな、、、、」 硝輝の声もかすれていた。 このまま飢え死にかと思っていたら 錠が外され、兵は2人を引きずり出す。 「頼む、、、水、ぐ、、つっ」 「硝輝、いい。黙ってろ」 |
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