


月詠
静まり返った牢の中。コツンと小さな音がした。
ゆっくり近づいてくるそれは足音。姿を見せたのは青藍だった。
「何をしに来た」
「桂で何があったのか教えてください」
「月詠の命を狙ったんだ。このまま処刑だろう」
「まだ決めていません。何も。
だからその前に知りたいんです」
「、、、、、」
東雲は迷った。
本当にあの月詠を、今目の前にいる相手が出したのか。
だが村が襲われたのは事実。
「住んでいた桂に村は、お前たちに襲われた。
月詠で桂に反徒ありと出たそうだな」
「反徒、、、、いつ頃のことです」
「3年、、、、それくらい前か」
「その時の将が冬牙?」
「離散し、村は潰された。月詠で出たから。
それだけで、調べもしないで兵を向けさせたのか」
「待ってください、待って」
桂に反徒がでる。
青藍は必死で思いだそうとした。
だが、思い出せない。
「、、、、せめて覚えていることが責なのでしょうに
何一つ残っていないなんて」
「もう、どうでもいい」
「桂の村は本当に跡形も残っていないんですか?
、、、、残っている人たちに手を借せるなら」
「ふざけるな!」
ぴくりと、青藍の背中が震える。
「お前の手を借りるなど、、、、誰がするか」
「矛盾していることはわかってます。でも、何かをしたい。
国を動かすことで出る犠牲を避けられないのなら
せめて、残った人たちに。お願いします」
青藍は手をついた。
「お前、、、、」
嘘偽りの無い心なのだろう。
東雲はますます信じられなくなる。
そこでふと、一つの可能性に思い当たった。
「桂や謀反は別にして
西の秀麗山に関しての月詠なら覚えはあるか?」
「西の、、、、秀麗山」
東雲の言葉に青藍は考えてみる。
「あ、、、、確かに地理的には同じです。
同じ頃に、荒れるとは出ました。
結果としては、それまで例のない天候の大荒れで
穀物が大分やられて、農地も大幅に減少した、、、、
なのに、桂のことを忘れているなんて最低ですね」
東雲は確信した。
「そうか、、、、そういうことか」
「東雲?」
「お前もかつがれたんだよ」
「え、、、、」
「おそらく、桂に関しての月詠は出していない。
月詠を、都合のいいように解釈したやつがいるんだろう」
「まさか、、、」
「一番納得のいく説明だと思わないか?
本当に桂の月詠をお前が出したなら
何一つ覚えていないなんて事はないさ。
お前のように考えられる人間なら、な」
「月詠を曲げた、、、、、嘘だ、そんな、そんなこと」
「冬牙、だったな」
「冬牙、、、、あ」
「思い当たることがあるのか」
月詠をわざと曲げ村を襲ったなど信じたくない。
だが、少なくとも冬牙は羽百合の花を知っている。
そして羽百合は桂の特産。
東雲の言うことが本当なら
桂と羽百合の花を結びつけ、この事態を予測できた。
信じたくないが、状況は東雲の言葉が真実だと告げている。
「どうして、、、、」
何故何も言ってくれないのだろう。
兵を向ける理由があったというのなら、何故自分には黙っていたのだろう。
「お前の月詠は、いいように利用されていただけなんだよ。
それでも、あの2人を信じると?そういい切れるのか?」
「私、、、、私は」
青藍は逃げるように牢を出た。その足は冬牙の部屋へ向かった。