片翼の行方


「こっちです」

アージュに案内されて先へと進む。ワンフロアだが、広い病院だった。

「風響さま」

「来たか」

アントワネットは足を止めた。そう、以前2人で店に来た客のうちの1人。

「あなたが、ルディを」

「ああ」

「お医者様は、あなたですか」

「いや。もう1人が医者なんだ」

「ありがとうございます。助かりました。それで、、あの」

「終わったよ」

風響の言葉が何を意味するのか、アントワネットは結びつかなかった。

「手術、させてもらった」

「え、あの、、でも」

「診察と手術はルネの判断だ。
 詳しいことは、私にはわからないけど信じてもらっていい。成功だそうだよ」

これだけで、納得しろというが無理だろう。

風響は黙ってしまったアントワネットの手を取った。

「少なくとも、これ以上の悪化はしないはずだ。養生すれば大丈夫」

「本当、、、ですか?本当にあの人」

「、、、、、本当だ」

「ありがとう、、、ありがとうございます」

ルディが居ない間、1人で戦ってきたのだろう。落ちる滴が止まらなかった。

「風響さま、ルディさんは」

「まだ眠ってるけど、会えるよ。こっちだ」


更に奥へ進み、一室の扉を叩いた。

「どうぞ」

ルネの声が返り、静かに中に入る。いたのは確かに、あのときのもう1人。

「まさか、あのときのお客様に助けていただけるなんて思いませんでした。それで、ルディは」

「終わったばかりだから眠ってますけど、成功です。大丈夫」

「ありがとうございます。本当に、、、。一生忘れません」

「いえ。もう何日かはここで休んでください。何かあったら呼んでくださいね」

「わかりました」

「(ひそ)風響、2人だけに」

アントワネットとルディを2人にと、揃って部屋を後にした。その後姿に、アントワネットは深く頭を下げた。


「ルディ、、、奇跡よ。あの2人、神様かしら」

届かない言葉だが、アントワネットは続けた。

「あなたの傍らに在る未来、何よりもほしかった。叶ったのね」

待ち続けた相手。その温かさを確かめるように、そっと頬に手を寄せた。


部屋を移った3人も、ようやくといった感じで一息ついた。

「お疲れ様でした。お2人とも」

「私は何もしてないさ。ルネだよ」

「、、、成功してよかったです」

残るは、風響が内に入れたキュリオの片翼を抜くこと。

「風響、、、」

不安げにルネが見上げてくる。

「戻る。お前のところに」

それしか言いようはない。そっと腕の中に収めるた。が、、、

「あ、、あの、風響。アージュが、、」

「え、、、あ、、」

「、、、もう慣れました」

しごく冷静な言葉が返ってきた。そして現実。

「このことは、ランスさまからキュリオさまとシャルミラさまに伝えていただいています。
 ルディさんとアントワネットさんがキエヌに戻ったら、ということでよろしいですね」

「ありがとう。本当に世話になりっぱなしだな」

「御気になさらず」

「あの、、アージュ。やっぱり役目だからですか?」

仕えるという言葉が、どうしてもルネにはひっかかる。

同じ立場で友達に、、、それを伝えたい。

「、、、私がそうしたいからです」

「、、、、じゃ、友達、、でもいい?」

「はい(微笑)」

ルネの言葉に微笑が返った。ルネがさらに嬉しそうな笑顔になる。

それを信じて、風響は片翼の行方に想いをはせた。

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