

イルマの務める修道院は、定期的に病院の慰問をしていた。
その日もいつものようにベットを回っていたとき、忘れることのなかった面影に足が止まった。
「サイラス、、?」
瞳を閉じたまま静かに横たわっている姿。間違えるはずはない。
傍らに寄り、手を重ねる。
「あなたね」
「ん、、、」
ゆっくりと瞳が開いた。そしてイルマに気がつくも、言葉などでない。
「サイラス」
「はは、、、幻覚まで見るのか」
「幻なんかじゃない。隣にいるわ」
「イルマ、、、本当に、、」
「ええ」
「触れさせてくれ、、、」
サイラスの手がイルマに伸びる。その手を頬へと寄せた。
「サイラス、、」
「イルマ、どうしてここに。知り合いの見舞いか?」
サイラスの中で、イルマはサルバトゥール婦人。それに気がついた。
「あたし、修道院にいるの。定期的に慰問があるのよ」
「どうして、、、、サルバトゥールと一緒になったんじゃないか?私の、いっつ、、」
不用意に乗り出した体が軋んだ。イルマが手を添える。
「兄さんから聞いたわ。あなたが帰ってきたこと。そのまま姿を消したって。
あなたが生きてるってわかって、サルバトゥールを名乗る気にはならなかった。
あの人も、戻っても構わないって言ってくれたけれど
だからといって追いかけることも出来なかった。
だから、ラウルと兄と、あなたのために祈ることを選んだわ」
「やっぱり、私のせいだな」
「違う。それだけは絶対に違うわ。あたしの意思よ」
「イルマが祈ってくれたおかげか。最後の最後で会えるなんて、、、」
「、、、、、」
この病院がどういう場所だか知っている。末期を迎えた患者のための病院。
ここにいるということは、その時が近いということ。
器具や薬漬けではなく、緑に囲まれた明るい場所で
できるだけ安らかに眠りを迎えることができるよう考えられた場所だった。
再会は別れの場所でもあったのだ。
「イルマ、、残っている時間は少ないけれど
その間だけ私にイルマの時間をくれないか」
「愛してる、あなたを」
「私も」
暖かな木漏れ日が2日人を優しく包んでいった。