「ファウロ様、これを」

朝日が昇る少し前。棺に戻ろうとしたファウロに、エステバリスは手紙を差し出した。

「ミレーヌ様のお部屋にあったものです。、、、よかったのですか、これで」

「、、、人は人の生きる場所で生きればいい。共に生きても不幸にするだけだ」

「、、、私は共におります」

「ありがとう」


                        

               黙って出て行くこと、許してください。

               あの後、兄さんが来ました。

               街の人たちがここに攻撃をかけるつもりでいると。

               でも、私が戻ってだれもここに来なくなれば、それは止めさせると。

               だから戻ります。

               もう会えないけれど、生きてください。

               貴方が笑っていられるよう、願っています。                                  ミレーヌ

          

「これは処分しておいてくれ」

「、、、かしこまりました。ミレーヌ様を愛していらっしゃいますか?」

「、、、でなければ、あのときに抱いている」

歩き出すと足早に棺へと戻る。頬に伝うは、、、赤い涙が一滴。


黒雲がはれず、月光のかわりに稲妻が走る。不意にエステバリスの耳に小さな音が届いた。

「これは、、、」

「どうした?」

「鈴の音、、ミレーヌ様に差し上げたものです」

「何だと」

ファウロは窓から外を見る。稲妻の下に見えたのはミレーヌの姿。

「馬鹿な、、何を考えている!」

ファウロは部屋を飛び出した。

暫くしてミレーヌを抱きかかえたファウロが戻る。

ソファーに静かに下ろした。

「エステバリス、温かいものを」

「はい、すぐに」

エステバリスは急いで部屋を出た。

「何があった」

「、、、逃げて、、ください、、」

「、、、街の人間が来るのか」

「、、、逃げて、、一緒に連れて行って」

ミレーヌはロウファの胸に顔をうずめる。

「、、、私が戻れば、何もしないと言ったのに、、ごめんなさい、、、」

「お前のせいじゃない」

「、、人を、怖いと思った、、止めようとした、、兄さんまでっ、、」

「、、、、、」

察しはついた。腕の中の小さな体が震える。

「どうして、、どうして信じてくれないの?あなたは、、恐ろしい魔物なんかじゃない。
 あなたのほうがずっと、、、私のせい、、私のせいで、、兄さんまで死なせた、、、」

「思いつめるな。自分のせいにするんじゃない。
 私を憎め。それでいくらかでも楽になるんなら」

「兄さんは戻らない」

どんな言葉が救いになるというのだろう。ただ抱きしめた。

そこにエステバリスが戻る。

「エステバリス、ここを出るぞ。街の人間が来る」

「何処へでもお供いたします。けれど、、」

エステバリスは腕の中で泣きじゃくるミレーヌを見つめる。

「ミレーヌ、今のお前に冷静になれというのは酷だろうが、時間がない。
 聞いてくれ」

「、、、、、」

「今すぐにここを出る。朝日が昇る前に次の場所を探さなければならない。
 、、、一緒に来てくれるか?」

「、、、、、」

「同族にするかは、、、正直まだ決めかねている。それでも隣にいてほしい」

エステバリスが耳をすませる。

「近くまで来てます」

「ミレーヌ」

「、、、連れて行ってください。独りにしないで」

「、、、行くぞ」

「はい」

夜の闇の中へ、3人は新しい地を求めて歩き出した。


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