写し絵


歩きながらの話によると
カーネリアは一週間ほど前にソレアから来たのだという。

先ほどカーネリアを追いかけていたのは
親がつけた護衛役だとか。

「あんないかついの連れてたら余計目だって逆効果だよ」

「けれど、お父上もカーネリア殿をご心配してこそでしょう。
 そのお気持ちは汲んでさしあげないと」

「、、、紅響さんてどこの人?いい家の人なの?」

「え、いいえ、、わたくしはそのような」

「でも、そこまで丁寧な言い方する人そういないよ」

「昔からこうですので、あまり気にかけたことはありませんが
 改めたほうが良いことなのでしょうか」

「あなたって、、、」

カーネリアは笑い出していた。

「ごめん。だけど丁寧なうえに素直っていうか、、、
 悪いことじゃないんだから、そのままでいいよ。
 、、、ご機嫌取りのごますりより、ずっと」

最後の呟きは紅響に届かなかった。


そのうちに、目的の{銀月}に到着した。

「おそらく、こちらで間違いないと思います」

「ありがとう」

「では、わたくしはこれで」

最後まで丁寧な会釈をし、先へと歩き出した。その背中から声がした。

「紅響」

「、、、、」

呼びかけに一瞬だけ錯覚を起こす。

足を止め、振り向いた紅響にカーネリアは駆け寄った。

「この辺歩けば、また会えるかな」

「、、、、、」

「もう僕とは会いたくない?
 それとも家はキエヌじゃないの?」

「キエヌで暮らしてはおりますが」

「じゃあ、見かけたら声掛けてもいい?
 どこに住んでるとか、何してるとか、詮索はしないから」

「そうですね、、、この広いキエヌでまた会えたなら
 何かご縁があるのかもしれませんね」

わずかに微笑んだ紅響に
カーネリアは倍以上の笑顔を向けた。

「きっと会えるよ。楽しみにしてる。じゃあね」

その笑顔のままきびすを返し、店へと入った。

今度こそ、紅響は市場へと歩き出した。

「、、、、他人の空似。けれど、、、写し絵を見たようだ。皆、、どこに」

忘れることのできない面影が浮かんでは消える。

ちくりと痛む胸を抱きしめるように、紅響は手を旨に当てていた。


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